1975年出版の長編ミステリ。
映像化されていないのが不思議なぐらいの出来栄え。
あらすじ
一年前、突然妻に失踪されて以来、
明るさを失い冷酷な猟犬のようになった刑事・冬村。
その彼が不可解な自殺を遂げた脳外科医の事件を手掛けることに。
他殺と見た冬村は同僚の猪狩とともに事件を追う。
死んだ井上医師の乱れた生活ぶりと冷徹な神経さは異常だった。
事件を追ううちに冬村は謎の尾行者に幾度も命を狙われる。
井上が勤めていた病院の院長・瀬田はT大教授選を控えていた。
苦心の末、冬村と猪狩は瀬田が井上殺しの犯人であることを掴む。
しかし、重要な証人と思われた看護婦・克子が死体となって発見される。
瀬田には鉄壁のアリバイがあった。何しろ克子は遠い高知の海で見つかったのだ。
諦めず事件を追う冬村に黒い影が襲い掛かる――という話。
感想
面白い。
初期に色濃かった社会派のテイスト、
後に爆発するハードロマン、動物もの、伝奇もの、
壮大なスケールの設定など著者の全てが網羅されてるような感じ。
冬村と猪狩のキャラクターがこれまたいい。
禁欲的な主人公というのも珍しいような(笑)
また、時折はさまれる何気ない言葉が素晴らしくいい。
気持ちを否応なしにのせてくれる。こういうの大事。丁寧だしね。
不満があるとしたらラストかなあ。
尾行者の正体がちょっとなあというのと蛇足的な気がする。
そこは逮捕に向かうところでスパッといっちゃってくれた方が。
そういう点では時代は全然違うが宮部みゆき「火車」みたいな。
ああいうラストの方がこういう時にはいい気がする。
そのあたりもいろいろ参考になる作品。
映像化したらいいのにね。なってて知らんだけかもしれんが。