1985年出版の短編ミステリ集。
イソ弁・日下文雄が活躍する著者が世に送り出したシリーズ・キャラクターの一人。
表題作のほか、「処刑執行人」「女の意地」「骨肉の争い」「離婚願望」の計5編を収録。
あらすじと感想
表題作「蛇淫の精」は三年間行方不明の妻に対する離婚訴訟の弁護を依頼された日下。
少しでも資料を集めようと向かった丹後半島で奇妙な体験をする――という展開。
なんちゅうか怪奇ミステリ的な感じで、独特の短編。
「処刑執行人」は妻の浮気相手に対する慰謝料請求の事件。
しかし、その意趣返しとも思える貸金請求訴訟を逆に起こされて――という展開。
話のほとんどが法廷内で展開される典型的な法廷ミステリ。
専門用語の解説も文末にあって、そんなルールがあんのねと感心。
「女の意地」は小切手の誤記を巡る法廷もの。
実在の事件をもとにアレンジした内容で、創作の面白さが堪能できる作品。
手形と小切手の違いって使わん人間にとってはわからんけど、そこがポイントだったりする。
ラストはまあ…男ってアホですな、やっぱり。
「骨肉の争い」は娘が母親を相手取って父親名義の屋敷明け渡しを求める話。
法廷ではなく民事調停室が舞台になっているところが面白い。
無責任な大人たちへの日下の怒りが、この作品のテーマなのでは。
「離婚願望」は新婚間もない夫婦の離婚請求事件の話。
妻はなぜ古びた異人館をそれほどまでに欲しがるのかがポイント。
これまた怪奇ミステリな感じで、映像にしてみると面白いかもしれない。
一口に法廷ミステリといっても、いろいろなやり方がある。
学ぶものが多かった一冊。