高校野球の名門校であるPL学園が部員募集を停止するということで話題になっている。
教団の信者でなければならないだのなんだので、
結局監督が見つからないからやむなくということらしいが、
高校野球は教育の場であることを忘れてるんじゃないだろうか。
他の学校を見ても体罰やいじめ、野球留学に関する利権など様々な話題が尽きないものだが、
第34回江戸川乱歩賞を受賞した坂本光一の「白色の残像」はそんな高校野球の世界を描いたミステリーだ。
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あらすじと感想
あらためて読んでみると今から26年も前の作品なのに
高校野球を巡る本質はあまり変わっていないことに驚かされる。
あらすじを簡単にいうと、甲子園で活躍を続けるある名門強豪校。
打線が強力でどんなピッチャーも球種を読み対応し、打ち崩してしまう。
そこには驚きのからくりがあった――。
高校野球の選手達より、もと高校球児の新聞記者、
今は強豪校の監督をしている高校時代の仲間などがメイン人物。
夏の甲子園で起きている野球賭博の存在が問題で、
高校球児よりも周囲の大人達が青春を歪めていることへの醜さが表現されて、
またそのことへの怒りがとても感じられるミステリーだ。
ほんの一昔前までは高校生で140キロを投げていれば
すごいと言われたものだが、最近では珍しくはなくなった。
また、変化球の種類も段違いに増えている。
従ってこの作品に書かれていることが現代の投手達で同じことが可能かどうかは疑問ではある。
しかしそういった技術論ではなく、精神論の部分で
「高校野球とはどうあるべきか」をストレートに呼びかけた
このミステリーを多くの人達にぜひ読んでもらえればと思う。