昭和51年初出の作品。
司法制度の限界と民主主義は何かを問うた
初期社会派作品に通じる内容。
あらすじ
ベテラン刑事・中原が担当した殺人事件。
学生会館が焼け、一人の学生が焼死体となって発見されたのだ。
捜査の結果、犯人は内部の者らしいと判明。
中原は当初、学生寮に住み着く岡本夫婦を疑うがシロ。
次いで部下の平井刑事が目をつけていた安田を取り調べる。
安田は自供したものの、法廷で無罪を訴え始める。
作り話を連発し、検事とか確執のある辣腕弁護士により冤罪ムードが作られていく。
法廷は真実の追及の場ではないのか――中原の胃がキリキリと痛む。
感想
まるで現代のありようを先取りしているかのような作品。
真実は一つしかないにも関わらず、答えが2つに分かれるケースが裁判ではある。
無実の者が有罪にされてしまう冤罪もあれば、
有罪の者が無罪にされてしまうケースも裁判ではあるわけである。
いったい人間の行う裁判というのは何なのか、という重いテーマの作品。
しかし導入部はそれほど特異な事件ではない。
その後の法廷シーンが見事な出来栄え。
裁判の様子を冷静に客観視している中原の言葉が重い。
「勝つことだけを唯一の標的にしている。裁判というのは人間の業だと思った。
そこにあるのは主張することの技術しかない。真実探求は忘れられている。
むしろ、喜劇かもしれない」
裁判が内包する問題を世の中に問うた名作。