2018年出版の作品。
「任侠書房」「任侠学園」「任侠病院」に続くシリーズ第4弾。
今回は銭湯が舞台。阿岐本組長、代貸・日村ら個性的な面々が大活躍。
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あらすじ
東京のとある街に事務所を構えている阿岐本組。
昔気質の阿岐本組長に代貸の日村は振り回されっぱなし。
これまで出版社、高校、病院と他人が見放した物件を
次々と再生する役割を担ってきた。
人から頼まれると嫌と言わない阿岐本組長。
今回は赤坂の路地裏にある赤字の銭湯の話が持ち込まれる。
どんどん潰れ縮小の一途を辿る銭湯の経営再建などありうるのか。
悩む日村に、阿岐本は組員総出で道後温泉に行くと告げる。
銭湯に絡む利権がうごめく中、果たして銭湯の運命やいかに――という話。
感想
待望の任侠シリーズ第4弾。
普通シリーズになるとだんだんテンションが落ちてくるものだが、
ある意味シリーズ最高傑作かもと思える素晴らしい内容。
読んでて誰の気持ちに一番なるかといえば、代貸の日村。
いつも以上に語られる日本人論というか、これからのあり方的なものが
阿岐本組長から日村に語られるたびに「そやそや」と感じる。
「道理を忘れちゃ生きてる意味がない」という組長の言葉は重い。
銭湯って自分らが子供の頃は身近にあったものだ。
本の中で語られているように、銭湯に通う中で
公衆道徳というものを自然に身に着けていった気がする。
翻って現在は権利の主張こそすれ道徳心のない人間が増えている。
別に自分が品行方正というわけではないが唖然とさせられるケースがある。
いつの時代もわきまえている人もいればそうでない人もいたわけだが、
確実にその割合というか配分は悪い方に変化していると言えるのでは。
道後温泉にいきなり行くなんてのは意表を突かれた。
そういう展開のさせ方もあるのかあと感心。
さらに銭湯が生き残っている仕組みなどにも触れられていて興味深い。
読後感も抜群によく、これぞエンターテインメントと言える一冊。
こういうの書きたい。