伝説の時代小説・西村京太郎62「無明剣、走る」を読む

1982年出版の著者唯一無二の時代小説。
もともとは「阿州太平記 花と剣」のタイトルで
徳島新聞に1975年12月から1976年4月にかけて連載されたもの。
1983年にフジテレビで田村正和主演で映像化された。

あらすじ

時は徳川五代将軍綱吉の頃。
幕閣である柳沢吉保と酒井但馬守の権力闘争が続いていた。

同じ頃、阿波二十五万石も真っ二つに割れていた。。
妖術使いの兵法家・秋山幻斎によって国家老・勝浦主馬は呪殺された。

得をしたのは江戸家老・三浦半左エ門。
これで国を牛耳ることができると喜んだが、
主馬はそれを見越して後事を託した男たちがいた。

元阿波藩士で無明天心流の使い手、荒木田隼人。
闇の棟梁と呼ばれる盗賊、仏の源十郎。
豪商の鳴門屋重兵衛。

藩お取り潰しの謀略と権力争いに巻き込まれ、
阿波藩の未来を賭けた阿州剣山に眠る伝説の埋蔵金を巡り
江戸、阿波までの道中、阿波で壮絶な争いが繰り広げられる。
果たして最後に笑うことができるのは誰か――という話。


感想

理屈抜きに面白い。これぞエンターテインメント。
そのうまさはさすがというほかにない。

面白さを追求するということはこういうことである、って見本のような作品。

まず巧みなのは人間関係のアヤのつけ方。
一つ一つ上に重ねていくような重層感がたまらない。

ステレオタイプ的な人間もいないし。
柳沢吉保のこういう描き方他にないんちゃうかな。

難点は隼人が主人公なんだけど源十郎の方が魅力あるかな。
特に最後の方なんて源十郎メインだったりする。

聖夜に死を」なんかもそういう傾向あったけど。
書いてたの同じころだもんね。

しかし歴史のイフというのは皮肉なもので
もしこの作品が連載修了後にすぐ単行本化されていたら
ひたすら時代・歴史小説の依頼が殺到していたかもしれない。

時はまだトラベルミステリー発表前。
もしかすると著者のその後の経歴も変わっていたかも。

ま、たぶんどちらにしろヒット飛ばしてたと思うけど。
いや、面白かった。こういうのやりたい。

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