木枯し紋次郎シリーズの第5弾。
表題作のほか、「馬子唄に命を託した」「海鳴りに運命を聞いた」
「駈入寺に道は果てた」「明鴉に死地を射た」の計5編を収録。
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「夜泣石は霧に濡れた」は紋次郎とこんにゃくの秘話。
間引きにこんにゃくで口をふさぐというのはこの時代普通にあったのだ。
現代の児童虐待どころの騒ぎではない。ま、そうしなきゃ食えなかったわけだが。
それを知る幼馴染との対決もあり、読みどころの多いエピソード。
テレビシリーズ2・第5話の原作。ゲストは渚まゆみ、平田昭彦など。
「駈入寺に道は果てた」はミステリ仕立ての話。
一人身になりたい女が惚れていたのが別の紋次郎という名前の男。
何気ない話でもこういう細かいアヤのつけ方が素晴らしい。
テレビシリーズ2・第11話の原作。
ゲストは江夏夕子、織本順吉、浜田寅彦など。観たい。
「明鴉に死地を得た」はどんでん返しと人間不信全開の話。
老婆のこだわりが最後に悲劇を生む展開と、ラストのどんでん返しが印象的。
テレビシリーズ2・第14話の原作。ゲストは日色ともゑ、菅貫太郎など。
「馬子唄に命を託した」はテレビシリーズ2・第1話の原作。
ゲストは新藤恵美、三益愛子など。
「海鳴りに運命を聞いた」はテレビシリーズ2・第7話の原作。
ゲストは早瀬久美、河津清三郎など。
最近は時代小説といってもファンタジーだったり妖怪が出てきたりする。
それが新たな読者を獲得して全体的な底上げと根強い人気に貢献していることは
否定しようがないが、そもそも時代小説ってもともとはヒーローものである。
吉川英治「宮本武蔵」が今まで一番売れた(確か)小説なのは
決して偶然ではないはず。
木枯し紋次郎は70年代前半の時代の空気を反映して大ヒットしたが
今、何を書けば一番ヒーローとして通用するんだろう。
書き手としてはそれを頭に置いてやってかんとあかんのよね。