1955年の近代映画協会作品。監督・脚本は新藤兼人。
主演というか軸になるのは
乙羽信子、殿山泰司、菅井一郎、浜村淳、高杉早苗の5人。
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あらすじ
現金を積んだ郵便局のトラックが中年の男女5人に襲われた。
新聞は彼らを「群狼」と呼ぶが果たしてその実態はどうなのか。
そんな5人の生活は
戦後日本の貧困さを象徴するものだった――。
感想
随分昔に観て以来久々の鑑賞。
相変わらずちっとも救いがない。
ハードボイルドと評価する向きもあろうが
ドキュメンタリータッチといった方が正確なのではないだろうか。
まあなんせ主役5人それぞれ悲惨な生活を送っている。
乙羽信子は戦争未亡人で難病の子供を抱え手術代がいる。
殿山泰司は元自動車修理工。妻と2人の子供持ち。
事故で指をけがしていて仕事ができず、
金がないので息子は夏休みのキャンプにも行けない。
菅井一郎は元映画脚本家。
上の嫁いだ娘が失業中の夫や孫と
家に転がり込んでおりてんやわんや。
浜村淳は元銀行員。
組合活動で銀行をクビになって
妻からは別れてやるから手切れ金よこせと言われる始末。
高杉早苗も戦争未亡人。
育ち盛りの子供を抱え家賃半年近く溜めているせいで
大家から電気を止められる。
そんな5人が生命保険会社の同期で最後まで頑張るのだが
今も昔も同じことでどうあがいてもノルマを達成することができない。
顧客満足いうてたら達成できるってもんではないわいな。
で、暮らしがどんどん貧しくなる中、
冗談のつもりで言ってた現金輸送車襲撃を本当に実行しちゃうのだ。
お金を山分けした5人はそれぞれ家族のために使う。
浜村淳だけは金を嫁に叩きつけ
爽快な気分で家を飛び出すのだが。
しかし、捕まらないはずはなく
高杉早苗は罪悪感から子供とともに海へ身を投げ、他は逮捕される。
唯一の救いは乙羽信子の子供の手術が成功したことだけ。
戦後の混乱の中、失業した人達が生命保険の外交員になるが
契約を取れないために貧困が加速し、現金輸送車を襲うという内容。
そのため保険会社からは猛烈な圧力にさらされた。
今なら裁判沙汰かもしれんわな。
契約とれなきゃクビというのは今も昔もそれほど変わりゃせん。
格差社会という言葉が一般化した今日、
同じような話をやってみたい気もするが映像化は難しいだろうねえ……