2012年4月フジテレビ系列で放送されたスペシャルドラマ。
松本清張没後20特別企画として制作された。
原作は松本清張の同名短編小説。
主演は反町隆史。イッセー尾形、木村多江、石黒賢、倍賞美津子などが出演。
あらすじ
静岡の志摩川温泉で男の転落死体が発見された。
被害者は横川市市長・田山与太郎(イッセー尾形)。
田山は公務中に無断で一週間近く議会を欠席中。
定例市議会が大荒れになっている最中の出来事だった。
伯父の訃報を聞いた同市市議会議員・笠木(反町隆史)は現場に向かう。
元商社マンで堅物だった伯父はなぜ突然失踪したのか。
知人もいない志摩川温泉に来たことを訝る笠木。
家政婦のスミ子(倍賞美津子)の協力を得て
田山の遺品を整理していた笠木は日記を見つける。
そこに書かれていたのは商社マン時代に
海外赴任先で知り合った芳子(木村多江)という女性への思慕。
そして商社の機密費5億円を持ち逃げし、
芳子も連れて逃げた部下・山下への恨みだった。
笠木は田山の転落死にはこの2人が関係しているのではと疑う。
芳子と山下の足跡を辿った笠木が見たのは――という話。
感想
よくよく考えれば“失踪もの”が意外と多い松本清張。
原作は読んだかなあ、全集全部読んでんだから
読んだのだろうけどまーったく記憶にない。
それはさておきドラマだが、いろいろとツッコミどころの多い話。
まず登場人物に感情移入できるところがない。
しいていえば元一世風靡セピア・春海さん演じる
市長秘書・矢崎ぐらいのもんだ。
まず・・・田山ってどうやって市長になれたんだ(笑)
そんなもんだって皮肉に取れなくもないけれど。
元商社マンで部下に金持ち逃げされた苦い経験が
ムダな議会の海外視察を減らすということに繋がってるのだろうが
そのあたりの見せ方がイマイチな気がするのよね。
堅物で筋を曲げないというよりただ融通が利かない、
妻に先立たれ海外赴任中に日本料理屋で出会った芳子に一方的に好意。
それが転落死の伏線になるわけだが、これじゃただのアホにしか見えん。
アホというよりストーカー。「老いらくの恋」なんてものには感じない。
したがって事件を追っかける笠木もアホに見えちゃうのよね。
何してんの、アンタらみたいな。
そりゃ最後に芳子に「気持ち悪い」言われますわな。
実際そう思うもの。そういう風に見えちゃうとダメなんだな。
ネタバレっていう点で言えば
要は山下って田山が泊った旅館の支配人・浜本なわけで。
それもまたアンフェアちゃアンフェアなのよね。
回想シーンで出していないのがね。
だいたい持ち逃げした5億円は会社の機密費なんだから
2人がビクビクする必要はないわけだし。
逆に市議会一週間近くもすっぽかしている
市長の方がよっぽど問題だろうがと普通思うだろ。
俺が山下なら逆に田山を脅迫すると思うけどねー。
金のことはいいから芳子を返せで何日間も泊まるような客、
営業妨害で訴えちまえばいいんでないかい?
なんかリスクあるか? できんだろ、どう考えても。
それで自殺して真相追う方がまだ説得力あると思うんだけどね―。
そしたら回想で山下出てなくてもまだフェア感があるしよ。
それからスミ子がものすごく邪魔。
どこまででしゃばるの、アンタ。
ま、いろいろ都合があるということはわからんでもないが。
あとからどんどん出番が増えてったということだってあるかもしれんしね。
市長が見たであろう番組を笠木と矢崎とスミ子で見るわけだが、
ここでも山下と芳子が誰かわからんのを矢崎とスミ子が言うと
笠木がものすごくマヌケに見える。
そこは笠木がピンとこないといけないし、
そもそも2人の顔を知ってる人間に見せに行かんかいという話である。
あと山下は誰かという謎解きがチープすぎておいおいって感じ。
何年も魚釣ってる地元で暮らす人間のこと知らなさすぎだろ。
コンクールでこんなマヌケなシーン書いたら即アウトだろ。
推理小説でもシナリオでも。
さらに芳子と最後のシークエンスは全くの蛇足。
ていうか順番が違うのでは。
そこは花屋に帰ってくる前に持ってきて
笠木が嫁に「全部終わった」っていうからオチがつくわけで。
百歩譲って最後にあのシークエンスを持ってくるにしても
芳子に日記の内容尋ねられてあのセリフはないでしょ。
そんなセリフを力入れて喋られても。
そこはもっと捻ろうや、ナンボなんでも。
「気持ち悪い」って言われるわな、そりゃ(笑)
舞台を現代に持ってきている割には古臭い。
ちなみに志摩川温泉というのは架空の名前なので
いくら探してみても存在しませんのであしからず。