2003年初出の作品。
トラベルミステリーの隆盛を生んだ出世作、
「寝台特急殺人事件」から25年を経て書かれた記念作。
だけど映像化はまだなし。
Auto Amazon Links: プロダクトが見つかりません。
あらすじ
雨の日に起きたある不可抗力からの殺人事件。
被害者は暴走族上がりの愚連隊SS会の男。
その場にいた友人2人はなぜか刺した男、
仁科のことを隠し、捜査は進展しない。
そうこうするうちに仁科はブルートレインに乗って長崎へと向かう。
メンツをつぶされたSS会も仁科を殺すべく復讐に燃えて後を追う。
十津川警部達も更なる事件を防ぐべくブルートレインに。
しかし、列車の中でSS会の男が殺害される。
犯人は仁科なのか、それとも――という話。
感想
記念作品ということもあり、なかなか大掛かりな作品。
久々に列車の中メインだし、犯人側の心理も結構描かれていて
324ページの割にはボリューム感がある。
仁科という男は青年海外協力隊に参加するため、
周囲も協力して無事に逃がそうとするのだが
事情どうあれ人刺しておいて海外協力もないだろうと思うのだが、
同じ状況におかれりゃ逃がしてやろうと思うのが人情かも。
ま、愚連隊にからまれて間違って刺したからといって自分が被害者にも思いますわな。
SS会の襲撃も切り抜け、逮捕され一人見送る仁科に十津川警部がいう言葉が素晴らしい。
「君はそういうグループに入らないと何もできない人間なのか。
何か大きなバックに頼らないと何もできない意気地なしなのか!」
そこから続く言葉、そして硬直した印象を受ける仁科の協力者達の姿や
SS会の人物の描き方にも著者の若者に向けたエール、感じ方というのがよく出ているように思える。
バタバタ感もあるが、読後感のいい作品。