1986年の作品。
あらすじ
共同農場の農場長・尾関穣。
彼にはベトナム戦争時
CIA現地工作員として
活動した過去があった。
ある日、その時の同僚であった
ベトナム人ロアンから助けを求められる。
それは過去を忘却の淵に沈めてきた尾関が
再び過酷で非常な世界に舞い戻らざるを
得ないサインだった――。
感想
著者7冊目の作品である本作。
だが、あとがきを読むと
本人の中では2冊目あたりの位置づけらしい。
デビュー作「飢えて狼」と前後して
取りかかった作品とのことで
いったん引っ込めたものを大きく
書き直して7冊目となったようだ。
それだけ登場人物に対する
愛着が深かったようでなるほど
それぞれ深みのある人物像となっている。
特に主人公尾関の示す非情さというか
クールさは予定調和感がなく引き込まれる。
欲を言えば前半がだるいというか
謎の部分が多すぎてもやもや感があるというか。
後半は一気に燃え上がり
昔の同僚ウォーリスと最後に対峙する場面では
これぞ「シミタツ節」と言えるものを堪能できる。
「裂けて海峡」や「背いて故郷」ほど
知られてはいないがおススメの一冊。