1960年初出の長編本格ミステリ。
著者の長編第三弾にあたる作品。
あらすじ
病気で休職中の新聞記者・吉村は、
街でばったり出会った大学時代の友人・塩入から奇妙な依頼を受ける。
塩入の三つ年下の従妹・みどりが、
去年事故死した父親を自分が殺したと悩み、
それ以来、ずっとふさぎこんだままだという。
別の原因をでっち上げて、彼女の心の負担を取り除いてほしいというのだ。
警察が事故死と断定した事件をほじくり返す奇妙な依頼を、
最初は断ろうとした吉村だったが、人助けと聞いては放ってもおけず、
結局引き受けて、あれこれ調べ始める。
だが、調べていくうちにいろいろ疑問点が出てきて――という話。
感想
なんやかんや言うても上手い。
三階建ての古い洋館とくれば江戸川乱歩の『三角館の恐怖』じゃないけれど、
否が応でもドロドロした感じになりそうなもんだが、そんなことは全くない。
らしさ全開の、人間の心理を丁寧に描いた作品になっている。
どこかほのぼのというかね、悪人はいまへんで~みたいな。
しいていえば、死んだ親父が悪人っちゃ悪人なわけだが、
まあそれも、特に違和感のないテクニックが光る。
一見、関係なさそうに見える行方不明者も
終りの方で効いてくるのだから、やっぱり見せ方が上手い。
ラジオが配線図通りに組み立てても、音が鳴らないのはなぜか。
そのあたりの機能的な効果が上手だなあと感心。
ほんでもって、ラストはなんかさわやか。
こういう人柄が出る作品を書かなアカンねえと、あらためて思った次第。