乱歩賞作家・日下圭介短編集「ころす・の・よ」を読む

1988年出版の短編集。
表題作のほか、「暗い光」「バイバイ・アリバイ」
「うぶな娘」「初恋」「阿見の女」「盲点のひと」の計7編を収録。

あらすじと感想

「暗い光」は週刊小説昭和62年9月4日号。
夫の転勤で蛍が見える田舎に引っ越してきた人妻のわたし。
暑い夏にうんざりしているが、そんな中同居している甥の啓吾に殺人容疑が――という話。

1989年の乱歩賞作家サスペンスで映像化。
出演はかたせ梨乃、倉田てつを、寺田農、川谷拓三など。
原作にあるラストの爽やかさが活かされているかどうか。


「バイバイ・アリバイ」は小説新潮昭和61年4月号。
はずみで友達を殺してしまった高校生の卓也。
アリバイ作りに成功したが、矛盾に気づいてウソを塗り固めていくのだが――という話。

因果応報というか、ラストの墓穴の掘り方が何とも言えない。


「うぶな娘」は小説新潮昭和60年9月号。
目立たない病院の事務員、志津子。
彼女はテニス仲間の結婚式に参加する際、
元院長夫人にダイヤのブローチとイヤリングを借りたばかりに、
プレイボーイの昭彦に声をかけられ、恋をしてしまう。

だが、昭彦は同じ病院の薬剤師・恵子と組んで
ダイヤを盗み、その罪を志津子に着せようとしていた――という話。

ま、なんちゅうか人は自分の予想通りには動いてくれないものだ。


「初恋」はオール讀物昭和62年7月号。
探偵であるわたしは父親の初恋の人探しを依頼される。
その女性の父親はがんで余命いくばくもないため、
心をうつような何かをしてあげたいというのだ。

しかし、35年も前のことで手掛かりもわずかでしかない。
わたしは何とか細い糸を探りながら調査していくのだが――という話。

ラストはベタと言えばベタだが、やはりこういう場面はいい。


「ころす・の・よ」は小説新潮昭和62年4月号。
4年間続いた宍倉との関係が終わり、理沙は殺害計画を練る。
同じような思いをしたことのある静香は、よりを戻すが
理沙はあくまでも宍倉の殺害計画を進めていく――という話。

1988年に乱歩賞作家サスペンスで映像化。
片平なぎさ、三浦浩一などが出演。
これもラストの感じがドラマにどう活かされているか興味深い。
なかなかこのテの一時間ドラマは観る機会ないのよねえ。


「阿見の女」は小説新潮昭和62年8月号。
昔知り合った台湾人女性との仲を裂かれた会社員。
台北に仕事で訪れた際、別れた女性とそっくりな女性と出会うのだが――という話。

ラストが戦慄というか、映像的に映える感じ。
これ映像化してほしいなあ。


「盲点のひと」は中央公論昭和62年5月臨時増刊号。
謎の通報から男性の死体が発見された。
事件は自殺かと思われたが、不審な点が見つかり二転三転。
そして女性の死体が見つかり、男が殺害者ということで決着するが――という話。

女の友情というか、時には真実を葬る優しさも大事と教えてくれる。
人情の機微というか、そういうものを感じさせてくれる余韻の残る作品。

やっぱり短編が上手いなあと思う作家のひとり。
温故知新ということは大切である。

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