笹沢左保「東海道・無頼旅 地獄の辰シリーズ」を読む

初出は「小説宝石」1974年2月号から9回にわたり連載。
その時は「地獄の辰・無頼控」で
翌年「東海道・無頼旅 地獄の辰シリーズ」として出版。
地獄の辰 無残捕物控」の続編。

あらすじ

将来を誓った女・お玉と
自分をこき使った同心・磯貝源之進に裏切られた男、
人呼んで「地獄の辰」こと江戸・深川の岡っ引き・辰造。

彼は十手を捨て、気ままな湯治場巡りをしていた。
そこにかつての手下、留三郎と銀太が現れる。

2人は御目付から託された密命を伝えるが
人間不信の極致にある辰造は耳を貸そうともしない。

祈祷師が何を企もうが俺の知ったこっちゃねえ。
しかし、一つの出来事が辰造の運命を変えた。

なんと銀太がその祈祷師の守り袋を手にしたまま、
何者かに惨殺されてしまったのだ!

怒りに燃え、銀太の復讐を誓う辰造は
御目付の密命を承諾する。

東海道を西へ下る辰造と留三郎と
謎の祈祷師・京極紫雲斎率いる一行との死闘が始まる――という話。


感想

銀太が惨殺されるのはインパクト大。
荒ぶる辰造はそれまで以上にアナーキー。
留三郎は相変わらずの色男ぶりを所々で発揮。

そのあたりはまあまあいいのだが
何となく話がワンパターン化している気もする。

時代小説にミステリ色とアナーキーさを
持ち込み一世を風靡した著者だが、
その試みが今日光を浴びているとは言い難い。

少なくとも池波正太郎や藤沢周平ほどの評価はない。

その理由の一つとして挙げられるのが
どんでん返しにこだわりすぎた点にある。

アナーキーさを増す辰造の姿は嫌いではないが
だったら長十手も捨てたらどうかと思ってしまう。

ま、そのあたりを差し引いても結構面白いけど。

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