1952年、チャップリン63歳の時の作品。
喜劇のライバル、バスター・キートンとの共演が話題をよんだ。
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あらすじ
舞台は1914年のロンドン。
かつての人気コメディアン、カルベロ(チャップリン)。
しかし今はただの初老の男。
今日も酔っぱらってアパートに帰ると
ガスの臭いに気づく。
臭いがする部屋に体当たりし
中に入ると若い女がベッドに倒れていた。
この若い女性、テリ―(クレア・ブルーム)。
失業した不幸なバレエの踊り子だった。
カルベロは彼女を勇気づけるため
大切なバイオリンも質に入れて食物を買い与える。
「人間が生きるためにはね、
いいかい、少しばかりの勇気と、
少しばかりのお金があればいいんだよ」
カルベロの言葉にテリ―は勇気づけられるが
足の関節の発作が治らず歩くこともできない。
カルベロはテリ―を本当に勇気づけるためには
自分が働くことだと決心する。
昔馴染みの好意で久しぶりのカムバック。
チョイ役だがそんなことは言ってられない。
しかし、久しぶりの舞台に立った彼に
観客は冷淡だった。
演技中に席を立っていくのだ。
俺はコメディアンとしてもうだめだ。
落ち込むカルベロを今度はテリ―が励ます。
夢中でベッドから降りてカルベロに歩み寄ったのだ。
ついに歩くことができたのだ。
喜ぶ2人は夜明けの公園で未来を語り合う。
6カ月後――。テリ―は舞台に立っていた。
ダンサーとしての才能を認められ契約にも成功。
テリ―は客席で目を潤ませていたカルベロに結婚を申し込む。
しかし、カルベロはテリ―の本当の幸せは
自分との結婚生活にはないことを知っていた――という話。
感想
トーキー嫌いだったチャップリンを
トーキー映画に駆り立てたのはヒトラーの存在であることは有名。
一命を駆けて作り上げた「独裁者」(1940)。
ラストの演説は世界に響き、ここからトーキー映画への
道を歩み始めるわけだが、今見てもその演説内容は瑞々しい。
それから7年後の1947年には「殺人狂時代」を作る。
「一人殺すのは犯罪で、百万人殺すのは英雄か」という
強烈なメッセージはこれまた今なお光り輝いている。
もうこの頃になるとチャップリンの代名詞だった
ちょび髭やドタ靴などは影も形もない。
そうした経緯を経てチャップリンが描いて来た
「愛の世界」に立ちかえったのが本作。
芸能界では歳の差婚が話題に上る時があるが
この映画のラストシーンはかなり痛ましいが美しくもある。
成長したテリ―がカルベロの舞台を用意し
再び喝采を浴びながら舞台でカルベロは死んでいく。
アンコールを浴びながら死にゆく老優。
自身の境遇も重ね合わせていたのだろうか。
この時代、ハリウッドに赤狩りが吹き荒れる中、
これだけのものを作り上げるエネルギーが凄い。
この年、ロンドンに本作の上映に向かう
船の途中でチャップリンは国外追放されるが
1972年アカデミー賞名誉賞受賞でハリウッドへ。
その際にはスタンディングオベーションが
5分以上にわたって続くという名場面が起きた。
ステッキが日本製だったり、家の使用人を
全員日本人にしたこともあったり
日本と縁の深かったチャップリン。
最近観ていなかったからもう一度観ていこ。