1982年土曜ワイド劇場枠で放送。
原作は松本清張の同名ミステリ。本作が初のドラマ化。
後に1995、2010年にテレビドラマ化されている。
主人公は近藤正臣。風吹ジュン、加藤治子、生田悦子、池波志乃、佐野浅夫などが出演。
あらすじ
銀行員の川上克次(近藤正臣)はお得意先の
私大理事長の娘・保子(生田悦子)を妻に持ち、
傍目から見れば何の問題もない生活を送っていた。
ところが実態は、妻の家族にへーこらしなくてはならず、
家庭はちーとも心の安らぐ場所ではない。
隣の芝生は青く見えるのだ、何でも。
当然ストレス解消は女でしかない。
相手はホステスの文子(風吹ジュン)。小遣いぐらいはどうにかあるぜ、へへんだ。
他に趣味といえばパチンコぐらいの克次だが、
実は書道が得意で代筆なら任しておきなさいというのがささやかな誇り。
文子のアパートへ向かう途中、古書店の色っぽい店主・妙子(池波志乃)を見たり
近くの呉服店にかけられている達筆な引き札を眺めるのも息抜きの一つだった。
こんな達筆な人は誰じゃろと思ってたら
どうやら書いているのはその店の女主人・久子(加藤治子)な様子。
いかにもねえなんて感じ。
一方で古書店にやってきては妙子と親し気に話す客の小川(井上昭文)。
風貌からして胡散臭い以外の何物でもない。
うっとうしい家庭から離れた秘かな楽しみを持っているのに、
空気の読めない妻と義父によって克次に転勤話が持ち上がる。
何してくれとんねん、って話なのだが
一応出世コースで将来は義父の後を継げるかもわからんし
喜べないけど哀しくもない、でも息が詰まるなあとぜいたくな克次。
そんな時、久子が引っ越して呉服屋さようなら。
これも潮時だねえと文子に別れ話を切り出す克次。
当然、文子は金づるを手放すわけないから拒否。
会社の帰りに後をつけ始めた文子をまくために、
ちょうど書道道具を買ってたもんだから
「書道教授」と書かれた看板の一軒家に逃げ込んだ。
するとそこにいたのは文子。
もう弟子は取っていないと語る文子に無理やり弟子入り志願する克次。
しかしそれは、とんでもない運命の分かれ道の始まりだった――という話。
感想
こういうラストは結構好き。
例えるなら「太陽がいっぱい」みたいな。
完全犯罪だ~俺の未来は明るいぜ~ってとこに刑事が向かうってやつ。
皮肉というか風刺というかそういうのが効いてて好み。
書道塾の隠れた裏側にあるものというだけでなく、
それを知ることによって身の破滅を招いていく男。
人間の弱さが良く出ていて身につまされるものがある。
犯罪者って誰でもなる可能性があんのよね。
克次も欲をかくわけではなく、趣味からきた偶然ってとこが怖い。
書道が趣味じゃなかったら、違う運命だったわけだから。
仲間を平気で殺してしまう非情な組織なんだけど、
加藤治子、池波志乃、井上昭文とくればそこまで陰湿にならない。
要するに悪役悪役って感じにならない。さすがのお三方。
このちょっとだけはみ出している感っていうかな。抜群に上手い。
ある意味ふり幅利きすぎてんのは克次の妻・保子かな。
ナンボ金持ちでも嫌やろ、あんな女。
と思うのだが、世間ではああいう夫婦は結構多い。
正直結構うらやましい。一度でいいから金の心配のない生活がしてみたい(笑)