西村寿行初期の名作「安楽死」を読む

1973年初出の作品。
1979年の連続ドラマ「愛と死の絶唱」の
原作らしいのだが観る機会がないのでさっぱりわからない。
主演が大原麗子、田村正和っていいじゃねーか。
さらに金田賢一(新人!)、佐藤友美、岡田英次、森下愛子、中尾彬などって。
再放送してくれや。

あらすじ

妻に浮気され離婚し鬱屈した気持ちで日々を過ごしていた
警視庁の異色敏腕刑事、鳴海は密告電話の事件を引き受ける。

静岡の石廓崎で起きた女性ダイバーの溺死は事故ではなく
殺人事件だというのだ。被害者は大病院の看護婦だった。

鳴海は病院内部にうごめく不気味な黒い影を突き止めるが
捜査妨害の強力な圧力が降りかかる。

鳴海は事件の真相を暴くことができるのか――という話。


感想

西村寿行さんといえばハードロマンのイメージが強いが
デビュー当初は社会派の色が強かった。

この作品は誤診・安楽死・医薬問題など医師界の恥部を鋭くえぐっている。

しかし、単なる社会派作品に留まらずハードボイルドでもあり、
法廷ミステリでもあり、はたまた冒険小説とも言うことができ
後のハードロマン調を思わせる描写に満ち満ちている。

己のアイデンティティーの回復のため、
次第に事件に没頭していく鳴海の姿勢に共感を覚えずにはいられない。

その姿はまるで狩猟犬のようで
動物をミステリーに登場させる上手さでは
右に出る者はいないと言われた寿行さんの萌芽がすでにある。

また、自然との闘いといった特徴もこの頃から盛り込まれている。

40年以上前の作品でありながら
医療界を巡る諸問題に関する話は十分に今日性がある。

かえって新鮮に感じるぐらいおススメの小説だ。
それにしてもドラマ再放送でもDVDでもやってくれんかねえ…
(やってたりして)

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