西村京太郎12・初期の名作「殺しの双曲線」を久々に読む

1971年初出の作品。
冒頭に「この推理小説のメイントリックは
双生児であることを利用したものです」と掲げている。
著者が自選ベスト5にあげている作品で人気も高い。
1987年に金曜女のドラマスペシャルでテレビドラマ化。
出演は沢田亜矢子、長谷直美、篠田三郎など。観たい。
主題歌は刀根麻理子。デリンジャーの人だったっけ。

あらすじ

東京で発生した連続強盗事件。
被害者たちの証言から小柴兄弟が浮上するが
2人は一卵性双生児のためあまりに似ていて
どちらの犯行であるか特定できず逮捕のしようがない。

一方、宮城県にあるホテル「観雪荘」の主人から
招待状を受け取った東京在住のタイピスト・戸部京子。
婚約者の森口克郎とスキーを楽しみに訪れると
同じように東京から招待された風俗嬢の太地亜矢子、
サラリーマンの矢部一郎、大学の研究生・五十嵐哲也、
タクシー運転手の田島信夫の計4名の客と合流。
彼らを温かく迎えるホテルの主人・早川。

一同、仲良く団欒・・・なわけがない。
その夜、矢部が内側から鍵のかかった部屋で首を吊った姿で発見されたのだ。

自殺したと信じたくても壁に「かくて第一の復讐が行われた」という言葉と、
奇妙なマークを描いたカードが画鋲でピン止めされていたら、他殺以外のなにものでもない。

さらに電話線が切られ、唯一の交通手段である雪上車も何者かに破壊された。
そして、ボウリング場のピンが1本減っていた。怖いがな。

このままじゃまずいと田島がスキーで連絡に行くことになったが、
翌朝、何者かが宿泊客全員のスキーを折っていた。
そしてニュースで田島が実はタクシー強盗殺人犯で、
本物の田島に成りすましていたニセモノであることが発覚。

しかし、そのニセ田島も何者かが仕組んだコンパスの狂いで
逃走中に方向を間違えて崖から落ちて死亡。
部屋には「かくて第二の復讐が行われた」という言葉。
そしてカード。ボウリングのピンも1本減っていた。

一方、連続強盗事件の捜査本部には密告状が。
捜査本部はそれに基づき小柴兄弟を待ち伏せする。

観雪荘では森口、五十嵐と立て続けに殺され、
そのたびにカードが残され、ボウリングのピンも減っていた。
疑心暗鬼になるなという方がムリというもの。

やっと電話が通じ、早川は駅前の食堂に警察への通報を依頼。
しかし、雪崩のため観雪荘に着くのに2日はかかるという。
ヘリを飛ばさんかい、ヘリをと思うのだが、そんな展開はない。
そしてなぜだか電話も再び不通となってしまう。

まあとにかく連絡がついてホッとしたのもつかの間、
早川がダイニングキッチンで血の海の中に倒れていた。
残されたのは京子と亜矢子。互いに互いを疑いまくる。
京子はこれまでに起きたことを手紙に書き残す。

一方、銀行強盗の現行犯で小柴兄弟の弟・利男が逮捕。
自白によれば何者かが双生児であることを利用した
連続強盗の犯行計画を送ってきて兄弟をそそのかし、
兄の勝男と交互に犯行を行ったのだという。

ようやく観雪荘にたどり着いた地元警察と新聞記者、
家族たちの一行がホテルの中になだれ込む。

すると「私が間違っていました」との書置きを残した亜矢子の死体が。
死因は毒を飲んだ模様。

ホテルの裏には6つの雪の墓。それぞれの墓にボウリングのピンが。
墓を掘り返すと、5人の男の死体は全て顔が無残に叩き潰されていた。

不可解なことに、京子の顔だけはきれいなまま。
状況から亜矢子が犯人ということが濃厚になる。

しかしその後、連続強盗事件の捜査本部に
「かくて全ての復讐が行われた」というカードが届く。
しかも東京中央郵便局の消印でカードの投函日付は亜矢子の死亡後だ。

果たして真犯人は誰か?――という話。

 

感想

クリスティの「そして誰もいなくなった」を
下敷きにした本格推理小説不朽の名作。

読めば読むほど味が深まる小説。
正直最初読んだ時はそれほどでもなかったんだけど。

双生児の替え玉トリックですと
冒頭に掲げているのがある意味すでにひっかけ。

雪の山荘と孤島というのはクローズド・サークルの設定として
誰もが書いてみたい作品だがなかなかこれを越えるのは難しい。

自選ベスト5に入れるのも頷ける濃厚で
芳醇な本作を未読の方はぜひ読んでもらいたい。

追記

ドラマは原作とは結構違う。
そもそも双子のトリックすらありゃしない(笑)
ただの復讐話っていえばそれまでだが、
まあこれはこれでありじゃねーかなあと。
場所は富山の大牧温泉。行ってみたいなここ。

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