西村京太郎227「伊豆海岸殺人ルート」を読む

1994年初出の作品。ルートシリーズ10番目の作品になるのかな。
この頃になるとトラベルミステリーよりも
「殺人ルート」シリーズがどどーんと出ている。
1995年に渡瀬恒彦シリーズで映像化、
2015年に高橋十津川、高田亀井コンビでテレビドラマ化。

あらすじ

十津川警部は失踪していた写真家夫婦を見たとの知らせを受ける。
その夫婦はOL殺しで無実を叫び拘置所で自殺した男の証人だった。

続いて起こる謎の連続殺人。カギは一枚の写真。
その謎を追う十津川警部達をあざ笑うように
手掛かりを握る人物達がさらに殺されていく。

果たして犯人の目的は?--という話。


感想

相も変わらず謎を引っ張るのがうまい。
一枚の写真からいろいろと引っ張ってくれる。

まあ終わり方がこじつけといえばそれまでだが
実際問題そういうことはありえるわなと思える。

月曜ドラマの時は沢田亜矢子演じる女性弁護士と
平田満演じる静岡県警の後輩・米蔵警部補が目立つ。

水野夫妻ではなく水野だけ。演じるのはなんと筒井康隆。
これが結構似合う。

土曜ワイド版はそもそも自殺しない。
時間軸をちょいとずらし、容疑者として逮捕されるが
水野が人を殺したのを目撃した設定になっている。

さらに水野と妻は離婚しておりそのあたりもちと違う。
ま、違いを見比べるのも面白いかも。

それより感銘したのは巻末の文庫編集部の文章。
ちょうど西村氏が長谷川伸賞を受賞した時らしく
それについてのものなのだが
長らく初版作家の肩書を脱しきれなかった西村氏は
小説の勉強をやり直すことを決意。

新鷹会の「大衆文芸」に作品を発表することになった。
その作品群をまとめたのが「南神威島」。

後に文庫収録されるが初刊時は自費出版だったことは
よく知られた話だ。

小説を勉強しなおした当時、新鷹会の先輩たちに
「自分のためではなく、読み手のことを考えて書け」と
しばしば言われたそうである。

その修業時代がその後の飛躍を作ったとのこと。
自分が書きたいことを書いてなおかつ
読み手のことを考えるのは簡単なようでなかなか難しい。

もの書きにとっては永遠の課題である。
もの書きのはしくれとしては常に頭に置いておかなければ。

ところで、そのアドバイスを送った先輩作家はどうなったのか。

それもまた気になる話である。

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