時代小説・城昌幸「菖蒲狂い 若さま侍捕物手帖ミステリ傑作選」を読む

2020年初版の創元推理文庫。
五代捕物帳と呼ばれるうちの一つである
若さま侍捕物手帖から25編を収録した傑作選。

あらすじと感想

柳橋の船宿・喜仙に居候している一人の侍。
姓名も身分も不詳だが「若さま」と呼ばれる彼は、
日がな一日喜仙の一人娘・おいとに酌をさせている生活。

しかし、御用聞きの遠州屋小吉や
南町奉行所与力の佐々島俊蔵から難事件の話を聞くや、
時にはその場で時には出向いて解決してしまうのだった――という話。

いわゆる安楽椅子探偵というジャンルになるのだが、
べらんめえ調の子気味良さというか、若さまの鷹揚さが心地いい。

密室あり、毒殺ありなど本格ミステリ的要素も満載。
また、「女狐ごろし」のように怪談風味もあったりする。

このあたりは怪奇的な話も書いている著者ならではかな。
大川橋蔵が主人公を演じた東映映画のシリーズを始め、
田村正和などテレビ時代劇に数度なっているのもうなづける。

温故知新というか、こういう捕物帳の伝統も大事ですな。
関西弁でやったらどういう捕物帳になるんだろ。
方言を駆使した時代ミステリってのも面白いかもね。

追記

田村正和版のDVD解説書を書く機会をいただきました。

兄の田村高廣さんは『助け人走る』が父親・阪東妻三郎さんに近づいた話なら、
弟の田村正和さんはこれが父親に一番近い役柄というか、彷彿とさせる作品かなと思います。

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