名作テレビドラマ・石立鉄男&杉田かおる主演「パパと呼ばないで」を観る

1972年10月から約1年間放送。全40回。
おひかえあそばせ」「気になる嫁さん」に続く石立鉄男&ユニオン映画シリーズ第3弾。

あらすじと感想

主要キャストは以下の通り。
安武右京・・・石立鉄男
橋本千春・・・杉田かおる
井上精太郎・・大坂志郎
井上時枝・・・三崎千恵子
井上園子・・・松尾嘉代
井上和子・・・有吉ひとみ
井上昇・・・・小林文彦
魚屋・金造・・花沢徳衛
娘・治子・・・富士真奈美

5歳の女の子・千春(杉田かおる)が離婚した母と死に別れ、
28歳で独身の叔父・右京(石立鉄男)が引き取ることに。

アパートを引き払った右京は精太郎(大坂志郎)一家が営む
米屋の二階に下宿し、自分が仕事に出ている間、千春の面倒を見てもらうようにする。

そこでいろいろな出来事が巻き起こる――というのが大筋の展開。
ホームコメディというより、人情喜劇という言葉がぴったりくる名作テレビドラマ。

実は視聴率はそれほど高いわけではなかったが、
再放送されるにつれ人気が出たことと、石立鉄男の「チー坊」の呼び方が
後年凄く真似されるようになったこと、主要キャストがその後も活躍したこともあって
非常に知名度の高いドラマとなっている。

実際「チー坊」か「チィ坊」かは定かでないが、
モノマネにあるほど大げさな呼び方はそんなに多いわけではない。

ドラマのPRコピーは「複雑な世の中に複雑なふたり」。
なんとスタンダードな。今でも使えそうなコピー。

舞台となったのは佃島。
行ったことないけどだいぶこの時代とは風景も違うんでしょうな。

第1話は亡くなった姉(長内美那子)の娘・千春を右京が引き取り、
井上精米店にやってくる話。

同僚の内田(江守徹)のところで麻雀やってて、
徹夜明けで帰って来たところに姉危篤の電報が届いていた。

慌てて駆け付けたけど間に合わなかったという展開。
これ、身につまされるんだよなあ。
今なら携帯電話があるからすぐ連絡つくけれど当時はねえ。

自分も学生の時に夜中遊んで帰ってきたら
母親から父親が亡くなった連絡を受けたことがある。

身内の死に目に会えないというのは何ともやりきれないものだ。
おまけに親戚は叔母(野村昭子)を除いて総スカン状態。

そりゃ自分が引き取ると言い出すわな。
わりと最初から「チー坊」って言ってるし。

ところがチー坊は右京とまったく口をきいてくれない。
その理由は、右京のことを自分とママを捨てたパパと思っていたのだ。

この設定が第2話で生きてくるところが上手い。
さすが松木ひろしさん。

で、第2話ではチー坊が幼稚園で親がいないといじめられる。
相手をケガさせてしまうのだが、その頃右京はエレベーターガール(時代ですな)の
ユキ(田島令子)に夢中になっていたりする。そりゃはけ口は何か欲しいものだ。
結構フラれ続けるのだが。

親がいないといじめられたチー坊のために、パパと呼んでいいぞと語る右京。
そうした二人を見て米屋の皆さんも魚屋も心を開いていくという。
ネクタイとかもその後に生きてくるし、この第1話、2話はやっぱり上手い。

創作集団SHPメンバーが脚本を書いているのはシリーズの特徴だが、
本作は唯一あの向田邦子さんが名を連ねているのも大きい。
なぜだかあまり語られることはないけど。
「だいこんの花」とか「時間ですよ」は結構あるのにねえ。
“やだよう”をもじった矢田陽子名義まで本作には存在するというのに。謎だ。

向田邦子さん名義の回は矢田陽子を含め全部で14回。
ピアノがある家から養女の話がくる第11話「ネコふんじゃった」は結構有名だが、
第15話「とんだ人助け」と第22話「ハッピー・バースデー」が抜群にいい。

第15話のゲストは真屋順子さん。
幼稚園でチー坊をいじめた男の子の母親役で、一人で洋裁店を営んでいる。
右京に惹かれながら嘘をついて身を引くという展開に涙。
それを本人でなく店に来ている人々が語るところが上手いとしか言いようがない。

すれ違いを上手に描いている本作の中でも上位の出来栄えだと思う。
大人のやるせない複雑な気持ちの中で子どもの温もりだけが救い。

「ハッピー・バースデー」は同級生のマサオの誕生日会にチー坊が参加。
一週間後、チー坊の誕生日会にマサオが来ないので
チー坊が迎えに行くとマサオの母親が亡くなって葬式をしていた――という展開。

この回の子どもの描き方と伏線の張り方が素晴らしい。
ママを亡くした先輩としてチー坊がアドバイス。
葬式を抜け出して自分の誕生日会に呼んだりするわけだが、
そこには子どもならではのルールと愛情といたわりがある。
話を聞いてそれを理解できる大人たちも立派だと思う。

現代じゃ考えられないかもしれませんな。
なにせ同じマンションに住んでいても作ったものを食べさせるな、
なんてルールを作っていたりするところもあるみたいだから。

そんなことで豊かに子どもが育つのかねえと思うのだが、
間違いがあったら取り返しがつかないから当たり前ってのも一概に否定できない。

窪田篤人さんの終盤三部作と最終回など名エピソードは多々あるが、
結局右京は米屋の長女・園子と結婚することに。

10年後にはサスペンスの女王と呼ばれる松尾嘉代さん。
園子と次女・和子の関係性も下町感が出ててよかった。

有吉ひとみさん、いい女優さんだよねえ。
「太陽にほえろ!」で殿下の恋人だったりボギーの姉さんってイメージが強い。
園子と結婚するより和子と結婚する方が幸せになれるのではと思ったりもするけど。

富士真奈美さんは当初、いつもよりチャキチャキ感があったけど
回が進むにつれやっぱり三枚目的な方向に(笑)
でも、これが上手いんだな。さすがとしか言いようがない。

大坂志郎&花沢徳衛の江戸っ子コンビも見どころの一つ。
隣近所にお節介をやかなくなった最近は無機質ですな。
もっとも自分もそういうの鬱陶しいと思う方なのであるが(笑)

ラストの大団円感はシリーズの中でも一番あるかもね。

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