1989年7月4日火曜サスペンス劇場で放送。
原作は松本清張の同名短編ミステリ。
監督は田中登、脚本は宮川一郎。
主演は毎度おなじみ古谷一行。
伊藤蘭、前田吟、甲斐智枝美などが出演。
あらすじ
謹厳実直な銀行員の黒井忠男(古谷一行)。
若くして未亡人となった妹・光子(甲斐智枝美)と二人暮らし。
見合い話も出ている光子に比べ、忠男は結婚には興味がない。
ある日、亡き夫の墓参りに山形へ出かけた光子だが
予定が過ぎても帰ってこない。
不安になって捜索願を出した忠男だが、
三週間が経った後、北陸の温泉で光子の死が判明する。
死因は心臓発作。
なぜ身元がわからなかったか不思議だったが、
光子が大事に使っていた名札が持ち去られていた。
旅館で話を聞くと、男がいたが姿を消したという。
光子と会っているのを知られたくなかったため、見殺しにしたのだ。
怒りに燃えた忠男は何が何でも男に復讐したいと願う。
その男が同僚の笠岡(前田吟)と知った忠男は――という話。
感想
これ結構好きな作品なんだよねえ。
原作のテーマも好きだし。人の恨みはそう簡単には消えんのよ。
原作では「上海帰りのリル」がポイントになるのだが
ドラマでは「神田川」に変更。これがいいんだな。
配役のバランスもいいし、なんか細かいところが腑に落ちる。
そのあたり、脚本と演出もよくできてるなあと。
自分を捜査圏外に置くまで時期を待つ。
そこに共感できるかどうかなんだけど今だとどういう風にとるのかな。
すごーく共感するけどね、オレは(笑)
いったん殺意が萎えるところがまた上手い。
ところが神田川歌いだすもんだから、妹の歌リフレイン。
何コイツ忘れてくれとんじゃボケ、と殺意ぶりかえすでしょそりゃ。
このあたりのドラマ性が素晴らしい。
光子の失踪の受付をした刑事まで出てくるのはやり過ぎか。
でもそっちの方が盛り上がっていいかな。
忠男を庇うのは正子(伊藤蘭)。
このキャラクターは原作にはなかったかな。
ラストに救いもあるしね。バランスのいい作品。