深作欣二25・映画「軍旗はためく下に」を久々に観る

1972年公開の独立プロ映画。配給は東宝。
原作は結城昌治の同名小説で1971年度直木賞受賞作。
主演は丹波哲郎、左幸子。中村翫右衛門、藤田弓子、中原早苗、三谷昇などが出演。

あらすじ

元陸軍軍曹・富樫(丹波哲郎)の未亡人・サキエ(左幸子)。
富樫は終戦間際に南太平洋の最前線で敵前逃亡により処刑されたとなっていた。
そのため、ユキエは遺族年金を受け取ることができなかった。

ユキエはこれを不服として申立書を出すとともに
夫が敵前逃亡するような人物ではなかったことを証明するため奔走する。

そしてやっと夫が所属していた部隊の生存者4名を突き止め、
一人ずつ訪ねて歩くのだが、それぞれの証言が食い違いどれが真実なのかわからなくなる――という話。


感想

それぞれの証言が食い違い、いったいどれが真実なのかという見せ方は
芥川龍之介の「藪の中」を映画化した黒澤明「羅生門」を始めさまざまな作品がある。

この映画の優れているところは安易なヒューマニズムに行かず、
あくまで内地の感覚では理解できない戦争の実像というか、
戦争によって人間が変貌してしまう様といったものを描いたところなのでは。

そう考えると反戦映画だとすぐなっちゃうんだけど
そもそも戦争映画に反戦だ好戦だと色分けするのが違うんじゃないかと思っている。

だって東条英機を描いただけで戦争賛美だってすぐ騒いだりするし。
東条英機だって家に帰れば一人のお父さんだったでしょうよ。

例えが適切かどうか別にして暴力団の抗争だって
それぞれの立場から見ればどちらも真実だったりするわけだし。
戦時中だからといってすべての人間が竹槍持っとったわけじゃないしねえ。

よくある「過ちは繰り返しません」ってのもホントかなと思う。
「仇を討ってくれ」と思って死んでいった人たちも多いと思うんだよねえ。

コロナでいろんなものが変わろうとしているこのご時世、
一つ一つ吟味していく必要があるんじゃないのかなあ。

ま、変にヒューマニズムにもっていかないリアルさが
久々に観てもいろいろ考えさせられる映画でした。

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