山本薩夫監督映画「証人の椅子」を久々に観る

1965年公開の独立プロ映画。
原作は開高健『片隅の迷路』、監督は山本薩夫。
戦後を代表する冤罪事件の一つ、徳島ラジオ商殺しを描いている。
出演は奈良岡朋子、吉行和子、福田豊土、大滝秀治、加藤嘉、樋浦勉など。

あらすじ

徳島市で起きたラジオ店主殺害事件。
進展しない捜査の中、検察庁の手に事件が渡った途端、
内部犯行説にころっと変わって妻の洋子(奈良岡朋子)が逮捕される。

一審で懲役13年が下され、控訴するも二審でも結果は変わらず。
残るは最高裁だが、洋子の身柄は和歌山刑務所に。

ある日、洋子は独断で上告を取り下げる。
裁判を長引かせるより、服役後に自分で犯人を捜すことを決意したのだ。

この出来事に弁護士や親戚は仰天。
その頃、富士山麓の警察署にラジオ商殺しの犯人と自首する男がいた。

洋子の甥・浜田流二(福田豊土)は悔しさを抑えきれず
裁判のやり直しに取り組むことに。

洋子の有罪の決め手となったのはラジオ商店に勤めていた
二人の少年の証言だった。

二人の少年の証言を巡って、二転三転するその先にあったものは――という話。


感想

冤罪を描いた映画は数々あれど、
その中でも最高峰に位置するといっていいほどの名作。

タイトルの「証人の椅子」が示す通り、
二人の少年の証言があっちいったりこっちいったりする。

そこの描き方が抜群にうまい。
白黒で分けたがる現代とはえらい違いだ。
人間なんてそんな簡単に割り切れるものではない。

さまざまな要素があるし、それを利用しようとするものもいる。
特にこの事件は犯人が自首したにもかかわらず不起訴処分に。

検察の権力意識がこれほどあからさまに示された例はあまりない。
主人公のモデルは映画公開から一年余りして仮出所後、再審請求を続けた。

その最中に亡くなってしまうも、日本初の死後再審を経て
ついに無罪判決を遺族が勝ち取り、名誉回復がなされた。

しかし、袴田事件一つ例にとっても
なんにも変化しとらんということがよくわかる。

一つの冤罪事件と言うだけでなく、そこから社会が見える。
そういう社会に生きているということであり、
人間社会で起こることは自分の身にも常に起こり得ることだけは理解しておきたいものだ。

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