西村京太郎13・初期の隠れた名作「マンション殺人」を読む

1971年初出の作品。

初期の社会派本格推理傾向が堪能できる作品。

映像化はまだなし。

あらすじ

都心の高層マンションのモデルルームで

見学者の1人が殺害された。

被害者が持っていた名刺は大企業の管理部次長だったが

捜査を担当する田島刑事が会社を訪れると

本人はピンピンしている。

名刺は偽物と分かり、被害者は詐欺の前科があると判明。

しばらくして、別のニュータウンで同様の殺人が。

被害者が最初の被害者のニセ名刺を持っていたことから

最初の事件との繋がりがあるかと思われたが

捜査はなかなか進展しない。

そうこうしているうちに、最初の事件の見学者の1人が

何者かに殺害される。

刑事がわからない手掛かりを何か掴んだのか?

粘り強い合同捜査で事件の真相に

一歩ずつ進んでいく田島刑事達だが

更なる殺人事件が巻き起こる――という話。

 

感想

一言で言えば地味な作品だが

著者の初期の特徴にあった社会派意識と

弱者への温かい眼差しが色濃く出てる作品。

当時は「一億総中流化社会」と言われていた頃で

確かにマンション住んでる奴は今でいう

勝ち組(最近これすら聞かなくなったが)という感じはしてた。

それにまつわる詐欺事件が根っこにあり

犯人の動機は復讐にあるのだが

最後の最後まで犯人はわからない。

今に続くストーリーテラーぶりはこの頃から変わらない。

 

田島刑事って初期の作品には

結構出てくる気がするが

同一人物かどうかはよくわからない。

相棒の吉牟田刑事、合同捜査する園田刑事

それぞれ味があっていいがやはり地味。

それでも取り調べや最後の部分などは

初期に共通する「怒り」と「やるせなさ」が

色濃く出ていて読み応えがある。

後のようにこなれていなくて硬い文章にも思えるけど

かえってその方が味があると思う。

いい作品なんだけど、売れなかったのもわかる気はする。

ものを書くというのは難しい。

だからこそやりがいがあるのだが。

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