1977年初出の傑作。
探偵左文字進シリーズ第3弾。
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あらすじ
夫婦ともに気が強い左文字家。
他愛ない夫婦喧嘩から史子が事務所を飛び出した。
結構遠い公園まで来た時、電話ボックスが目に留まる。
電話をかけたくなって歩き出した時、
突然男がふらふらと歩いてきて史子にぶつかった。
怒りに身を任せ振り払おうとしたが男の様子がおかしい。
男は背中を刺されて瀕死の状態。
慌てて男を抱きかかえた史子に男が囁く。
「阻止してくれ。ゼロ計画。十月――」
短いダイイング・メッセージを残し男はこと切れた。
果たしてゼロ計画とは何か?
左文字と史子の捜査が始まる――という話。
感想
かつて土曜ワイド劇場で映像化されているはずなのだがお目にかかったことはない。
たぶんまだ90分の時代(もしくは120分になりかけの頃)。
要は医者と看護婦が数人の仲間と共に
総理大臣を誘拐して身代金を要求する話なのだが途中から様相が変わってくる。
その裏には実に深慮遠大な計画と罠が張り巡らされていた。
記念すべき登場作「消えた巨人軍」に比べれば
左文字の活躍の要素が少ない気がする。
誘拐事件の裏に隠されているものはある意味今日的なものがあるし
現実の中ですでに起きていることかもしれない。
そこらあたりまで踏み込んだらと思いがちなのだが
そうするとスリルとサスペンスが微妙になってくる。
初期は社会派的な作品が多かった著者だが
そういう部分を匂わせつつエンターテインメントに
仕上げるやり方というか方法論が確立してきた時期なのかも。
この1年後にトラベルミステリーで
一世を風靡するわけだからあながち間違ってないと思うのだが。