1988年初版のトラベルミステリー。
1989年に土曜ワイド劇場でテレビドラマ化。
舞台はかつて新宿から松本まで走っていた急行「アルプス」。
トラベルミステリーもいろいろ廃止されたら作りにくかろうと思えば
代わりに走るものも出てくるから成り立つんだろうねえたぶん。
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あらすじ
会社社長の一人娘が誘拐され、身代金一億円が要求される。
犯人からの父親への電話の指示は新宿発松本行きの急行「アルプス」に乗れとのこと。
十津川達も同乗し警戒するが、まんまと身代金を奪われる。
犯人を追うため父親を残し東京に引き返す十津川達。
娘は無事戻ってきたものの、なんと父親が車内で射殺された。
犯人の本当の目的は父親殺害だったのか?
そして身代金の行方は?
やがて第二、第三の殺人が起こる――という話。
感想
身代金を奪う手口は黒澤映画の名作「天国と地獄」の様に
反対側のホームに子どもを立たせ無事を確認した後
窓の隙間から身代金の入ったカバンを投げるというもの。
しかし、その後列車に乗った父親が殺害されるというスパイス効きまくりの展開。
もっとも何で十津川達と下りないで
乗り続ける必要があんのよという突っ込みもできるのだが。
映像化された際はゲストが大場久美子、中島ゆたか、三浦リカ。
射殺される社長は大出俊、内藤武敏、鈴木瑞穂などそれなりに豪華。
犯人の動機や身代金を奪う目的は
まあご都合主義って言ってしまえばそれまでなのだが
加害者より被害者の方が悪なのでそりゃそうだろと納得。
ていうか初期は弱者への優しい視点に満ち溢れた
作品を書き続けていた著者の本来持つ「らしさ」が
出ているトラベルミステリーと考えれば一読の価値ありと言えるのでは。