1985年出版の短編集。
表題作のほか、「殺しの慰謝料」「見事な被害者」
「タレントの城」「落し穴」「死の代役」「ヌード協定」
「闇の中の祭典」の計8編を収録。
Auto Amazon Links: プロダクトが見つかりません。
表題作「トンネルに消えた…」は珍しい左文字進の短編。
若い女性が消えた謎のトンネルで、テレビ局が
女性タレントを起用して謎を解こうとするのだが、
その女性タレントも忽然と姿を消す。
その謎を左文字進が解き明かすという話なのだが、
これが陳腐すぎて「何それ?」という感じ。
何でこれが表題作になったのか摩訶不思議としか言いようがない。
「殺しの慰謝料」は
テレビ相談で人気の弁護士が番組で依頼された
離婚の相談に乗るが殺人事件に巻き込まれる話。
ま、こんなとこかという話。
「見事な被害者」は
新聞記者がスクープ狙いで誤報をしてしまう。
海外で優勝後悲劇の死を遂げたドライバーの
彼女と思われた売れない歌手の自殺未遂が
思わぬ展開を招いていく――という話。
最後の一行に何とも言えない味がある。
「タレントの城」は
売れないものまねタレントがそのものまねをしていた
歌手の殺人事件に巻き込まれ、スターにのし上がる。
だが、そこには大手タレント事務所の
非情ともいえるからくりがあった――という話。
悪くはないんだけど、なんか古臭さを感じる。
いまこういう作品を書いてもまず無理だろうなと。
「落し穴」は大手会社のザイルの不良品によって
山で妻を失った男が復讐を誓い、自分で会社を立ち上げる。
だが、名もない企業のザイルなど誰も買ってはくれない。
そこで一計を案じ、自分の製品を売り出そうとするのだが――という話。
これは結構面白い。ラストも効いてる。
松本清張「鬼畜」の変型版という感じがせんでもない。
人間、暴走してはいかんのだ、やっぱり。
「死の代役」は
芸能記者が大手映画社のミュージカル映画製作を聞きつけ、
主演女優が誰になるのかスクープを手に入れようとする。
候補者は4人。だが、一人ずつ謎の死を遂げたり
事故に遭ったりしてとうとう残すは一人となるのだが――という話。
これも悪くない話。しかし、田島って主人公多いな。
「ヌード協定」は
売れない女優の卵3人が誰か売れたら自分たちも使ってもらえるよう
計らうという協定を結ぼうという話になり、エロ写真を撮り合って
それぞれ所持しておくことになった。
しばらくしてスターの座を一人の女優がつかむ。
他の二人が協定の実行を迫るが、なかなか進まない中――という話。
何だろねえ、なんか中途半端。
「闇の中の祭典」は
青年実業家と美人タレントの結婚披露宴に招かれた
離婚寸前の若手映画監督と中堅女優の妻。
舞台は地上38階の超高層ビル。
監督がお祝いのスピーチをしようとした際、突如停電――。
キャンドルも燃え尽きようとする中、助けも来ず
次第に参加者に焦りの色が見え始め、パニック状態に――という話。
これが一番面白い。
何て言うかありそうでない話というか変に新鮮味がある。
パニックの緊張感の中にもユーモア、ほのぼの感もあって
読後感も悪くない。こういうのもありかと思った。
それぞれいつ書かれたものかわからないが、
量を書かんと上達せんのよね、やっぱり。