結城昌治「死んだ夜明けに」を読む

1970年出版の短編集。
表題作のほか、「乾いた女」「歪んだ娘」「夜が崩れた」
「熱い死角」「殺意の背景」「ヤクザな妹」の計7編を収録。

「死んだ夜明けに」はオール読物1967年7月号掲載。

ぐれてる頃の仲間で今は三者三様の生き方をしている3人組。
疎遠になる者もいれば腐れ縁あり、まじめになる者もいれば
変わらない者ありといった具合。

ところが、仲間の一人・佐度井が絞殺死体で発見される。
事情を知りたがる石津と特に関心のない宮下。

女遊びが激しかったボンボンの宮下は
明子と知り合ったことで急転換、まじめになっていた。

結婚も近くなりウキウキの宮下だが、
今度は明子が何者かに殺害される。

石津は捜査にあたっている木原刑事に相談するが――という話。


「乾いた女」は別冊アサヒ芸能問題小説1969年1月号。

昔の女・春江と再会した刑事の岡野。
先輩刑事・木藤の妻となっていた春江。

妬けぼっくりに火が付くとはよくいったもんで
再び春江に溺れだす岡野だが、木藤から妻の浮気を相談される。

さらに春江が殺されてしまうが――という話。


「歪んだ娘」は小説エース1969年5月号。

大野組のボス・大野のもとに立ち寄った佐々木刑事。
ぐれた娘・友美のことで相談され、
田淵というチンピラと付き合っていることがわかる。

軽く思っていた佐々木だったが
友美が何者かに殺され田淵が行方をくらましてしまう――という話。


「夜が崩れた」は別冊アサヒ芸能問題小説1968年8月号。

ヤクザの妹・浩子と付き合っている刑事の安井。
結婚を真剣に考えるも浩子の兄・中根が強盗を働いた。
捜査から外される中、安井は中根の行方を追うが――という話。


「熱い死角」は小説現代1969年7月号。

過去のある女の供述調書を取りながら
妻・左知子のことを連想してしまった稲尾刑事。

明るかった左知子の最近暗い感じが気にかかる。
ある日、ヤクザの谷口が左知子と歩いているところを目撃。

左知子を愛する稲尾は何か谷口に脅迫されているのか疑う。
左知子の周囲を洗い、谷口のヤサを突き止めるのだが――という話。


「殺意の背景」はもともと「初めて愛して」というタイトル。
小説エース1968年10月号掲載。

バーのホステス・洋子と結婚を誓う矢木刑事。
しかし、部長始め周囲は猛反対。

そんな中、姉と住む洋子が矢木と会った後で殺される。
容疑をかけられた矢木は尾行が付いているのを知りながら
洋子を殺した犯人を追いかけるが――という話。


「ヤクザな妹」は小説エース1969年2月号。
映画「昭和枯れすすき」の原作でもある。

足の悪い妹・典子を気に掛ける原田刑事。
そんなことを知ってか知らずか、
素行の悪い男たちと付き合う典子。

やがてその中の一人が殺され、
典子を信じながらも捜査にあたる原田だが――という話。


感想

いずれも終わり方がダークというか
救いがなくて終わる話がほとんど。

しかしまあ、人間心理の書き方が上手い。

「熱い死角」の終わり方なんて
やるせないというか何というか。

やはり名手の作品から学ぶことは多い。

しかし、同系列のダークな話を続けて読むと
どよーんとしてきますな。

いろんなジャンルの先駆者として活躍した著者だが、
こうやって集めてみるとある意味イヤミスのはしりかも。

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