1983年出版の短編集。
表題作のほか、「夜の殺人者」「カードの城」「刑事」
「手を拍く猿」「幻想の夏」「南神威島」「鳩」の計8編を収録。
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「夜の殺人者」は十津川警部&亀井刑事コンビ。
女にひっかけられ罠に落ちた男を助ける話。
「カードの城」は田口刑事。田島じゃないのね。
タイトルが味わい深い作品で、初期の雰囲気がよく出てる。
トルコで働く女性が殺され、容疑者らしき男が浮上。
しかし、その男は周囲から先生と呼ばれ一目置かれる存在。
売れない詩人であるその男は本当に犯人なのか――という話。
これはよくできている作品。
現代にも通じるところがあり、人間観察が素晴らしい。
こういうのは書いてみたいなあ。
「刑事」はある事件を自分の境遇に引き寄せ
一心不乱に捜査を行った刑事が招いた悲劇。
救いのない話で、身につまされる。ラストシーンが悲しすぎる。
表題作「行先のない切符」はある中年男の死。
平凡な中年男がスリを目撃し、その快感に取りつかれる。
これも現代に通じるものがありすぎ。
少々強引だが、ラストの切れ味が素晴らしい。
「手を拍く猿」は前にも読んだので省略。
「幻想の夏」は「海辺の悲劇」とよく似ている。
ていうか展開がほぼほぼ同じ。こういうの好きだけど。
「南神威島」も前に読んだので省略。
「鳩」は浅草寺で起こる謎の鳩の連続死。
同じころ、凶悪犯が脱獄し浅草に潜伏中との情報が。
鳩の話と脱獄事件の結びつきは?
田島刑事は両方の事件を追うのだが――という話。
心温まるというか優しさに溢れた好短編。