1984年出版の短編集。
主人公は「北帰行殺人事件」で登場した青木亜木子。
表題作のほか、「十和田南への旅」「四国情死行」
「宮崎へのラブレター」「湯煙の中の殺意」「祇園の女」
「サロベツ荒野で死んだ女」「白樺心中行」の計8編を収録。
あらすじと感想
「都電荒川線殺人事件」
白昼都電の車内で、盲目のマッサージ師が毒殺される。
容疑は薬剤師である彼の妻にかけられる。
毒物がカプセルに仕込まれたヒ素であったことから
妻の容疑はますます濃いものに。
しかし、普段から二人の仲の良さを知る乗客は
妻がそんなことをするはずはないと事件を調べ始める。
たまたま居合わせた雑誌記者の青木亜木子も
その中に加わって事件の真相を探ることに――という話。
時代小説を思わせる下町人情噺。
ミステリは場所の設定が大事だが、理想的な短編かも。
「十和田南への旅」は十津川警部がゲスト登場。
亜木子は自分の記事を見て十和田湖に旅行して
失踪した女子大生の捜索を連れの彼女と行うのだが――という話。
「四国情死行」は四国八十八カ所。
スキャンダルを起こし引退した女優がお遍路さんを
しているという情報を仕入れ、亜木子も後を追う――という展開。
ラストの哀しい幕切れが余韻を残す。
これは1996年に沢口靖子主演でテレビドラマ化。フジ系列だな。
「宮崎へのラブレター」は2014年に映像化。
主演は友近、「日光・鬼怒川 湯煙の殺意」のタイトルに変更。
宮﨑と方角違い過ぎやろ。
ま、ブルートレイン「富士」はもうなかったんかな。
物語は久しぶりの有給休暇をもらった亜木子が
ブルートレインで宮崎へ向かう。
その車中で知り合った男に恋心を抱くが、
彼はある事件に関係していて亜木子も巻き込まれてしまう――。
映像化作品を観てないから何とも言えんが
旅・恋・殺人が織り込まれていることは間違いないだろう。
「湯煙の中の殺意」も2013年に映像化。
主演は友近で青木亜木子シリーズ第1弾。
もっとも2回しか映像化されとらんが。
物語は伊豆の修善寺温泉に休養に亜木子が出かける。
なんで休養かと言えば連作短編になっているからで、
前作で傷ついた心を癒しに出てるわけですわ。
しかし、心休まるはずもなくまたまた殺人事件に出くわす。
岡本綺堂「修善寺物語」に見立てたロマンあふれる作品。
「祇園の女」は亜木子が京都の秋を取材する。
編集長の友人である案内役の吉田に魅了されるが、
吉田の愛人であるクラブのママが殺害され、
またまた亜木子は事件に巻き込まれていくはめに――。
「サロベツ原野で死んだ女」は1997年に映像化。
フジの「お局探偵亜木子&みどりの旅情事件帳」第1弾。
主演は斉藤慶子、久本雅美。
原作は夏の北海道へ取材に来た亜木子が
サロベツ原野で若い女の死体を発見する話。
事件の背景には嫁不足に悩む牧場の悲劇という
社会性ある深刻な問題があるわけだが、
映像化の際にはサロベツ原野はどこへやら。
場所は軽井沢に変更されている。
「軽井沢に消えた女 お見合いパーティーが呼ぶ
ストーカー連続殺人…別荘の庭は血みどろの死体農場」
観たいような観たくないような。
「白樺心中行」は編集長の田島が巻き込まれる。
元妻と田島が心中したと聞き、亜木子は松本へ。
ところが、顔を見たら全くの別人。
失踪した田島に殺人容疑がかかる中、
亜木子は十津川警部の力も借りて事件を探る――。
いずれも2時間サスペンスに向いている短編。