夏樹静子「光る崖」を読む

1977年出版の作品。「サンデー毎日」連載。
女性検事が主人公なのは当時珍しいことだった。
連載中にTBSで連ドラ化され、2016年にも単発でドラマ化。

あらすじ

名古屋地検の検事・千鳥朱子。
交通事故で入院中の妻がいる服飾企業のMD郷原と飛騨の旅に。
ひょんなことからつり橋でOLの昌代と顔見知りに。

ある日、名古屋市内で傷害致死事件が。
参考人として朱子の前に現れたのは昌代だった。
加害者である未成年者・奥平との利害関係も認められず、
事件は過失致死で終わったのだが――。

その頃、名古屋市内で巻き起こる売春事件。
娘の不審な行動を追う母親・久仁子。
その娘が付き合っている相手が奥平だったことを知った朱子は
違う事件に見えた毒殺事件と前の事件のつながりを推理していく――。


感想

荒いといえば荒い内容。
朱子が主人公で話が進んでいくのかと思えば
今度は久仁子が主体で進んでいきまた朱子に戻っていく。
構成が悪いのは連載小説の宿命なのだろうか。
朱子の視点でとことん行った方がよかったように思う。

しかし、そんな部分もありながらここぞという場面での
書きっぷりというか見せ方はさすがとしかいいようがない。
この頃は援助交際なんて言葉はないから売春ってのがストレートに響く。

連載中に連ドラになった際は吉永小百合が朱子を演じている。
郷原は田宮二郎。しかし内容は原作とはいろいろ違う。
要は朱子の夫が起こした交通事故の被害者が郷原の妻という設定。
夫に裏切られた妻と、妻に裏切られた夫との出会いみたいなラブロマンスに。

しかし原作では朱子の夫は検事で激務の末急死している。
夫がしていた職業を妻が目指して引き継ぎ、それが最後の取り調べで生きてくる。
もっとも原作ではなんで朱子が郷原と付き合ってんのかもひとつよくわからんのだが。

ま、これはこれで連ドラ版も観てみたい。
高島礼子の単発版の方が原作を踏襲しているかな。
原作では幼かった朱子の娘の年齢を高校生に上げて
昌代を通っている高校のカウンセラーにしているのも悪くない。
なんやかんやでこの原作、隠れた名作だと思う。

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