伝説の集団時代劇映画「大殺陣」を久々に観る

1964年の東映時代劇映画。
時代劇が下火になり、任侠路線への転換が行われている時代。
十三人の刺客」「十一人の侍」に続く集団時代劇3部作の最後。
監督は工藤栄一、脚本は池上金男。主演は里見浩太朗、平幹二郎。

あらすじ

時は4代将軍家綱の治世。
なんでも屋ではない妻の加代と幸せに暮らす神保平四郎(里見浩太朗)。
ところが友人をかくまったと誤解され、謀反を企む一味として捕縛される。
あげくに加代は切り殺され散々な目に。
世捨て人のような生活をしている旗本(平幹二郎)に助けられ難を逃れる。

平四郎は復讐を誓い、大老(大友柳太朗)の陰謀を打ち砕くべく
軍学者・山鹿素行(安部徹)率いる甲府宰相・綱重暗殺一味に加わる。
メンバーは素行の姪みや(宗方奈美)、妻子持ちの星野友之丞(大坂志郎)、
正気を失った日下仙之助(山本麟一)、正義に燃える別所隼人(河原崎長一郎)など8名。

決行当日、一人また一人と無残に斬り死にしていく暗殺メンバー。
逃げ出す奴も出る中、かろうじて綱重は生き残る。だがその時――という話。


感想

だいぶ昔に観たんだけど暗い話やなあという記憶しかない。
あらためて観るとやっぱり暗い。とにかくまあ救いのかけらもない。
陰々滅々という言葉がピタリとはまる。

とにかく他の2作品に比べて前半がダルい。
何やっとんねんという感じ。主人公も巻き込まれて一味に加わるわけで主体性がイマイチ。
どっちかというと妻子持ちの友之丞の方が感情移入できる。
前日の晩に嫁の赤木春恵以下子ども全員毒饅頭食わせて死地に赴く。
この後姿がまあ切ない。

しかしクライマックスの殺陣シーンは前2作に勝るとも劣らない。
むしろ一番好きかも。
かご担いで逃げ回る連中を少人数でひたすら追い回す。
里見浩太朗さんも後の華麗な剣はどこへやら。もはやゾンビである。
しかし五郎兵衛しっかりせえよ。

で、暗殺は失敗したのだが、里見浩太朗の死体を見た平幹二郎が
笑いながら歩いていこうとする綱重を「待たんかい、ボケこらぁ!」
と言ってるわけではないが、そういう気持ちで追いかけまわしぶつ切りにして自分も死ぬ。
里見浩太朗が持っていた刀は実は平幹二郎のもので、
その刀がボロボロに短くなるまで戦い抜いた姿に感化されたわけだな。

で、大友柳ちゃんが「綱重様はまだ生きておる!」なんて叫んでも後の祭り。
後の「柳生一族の陰謀」で「夢でござぁる!」と叫ぶ萬屋錦之助を連想させる。
だいたい首が飛んで「夢でござぁる!」もねえもんだが。

陰々滅々話が災いしたのか、集団時代劇映画もブームになるに至らず
東映はひたすら任侠路線を突っ走っていくわけだが、
その最後の仇花ともいうべき本作はクライマックスだけでも観る価値は十分にある。
ちなみにタイトルの読み方は「だいたて」ではなく「だいさつじん」。
つけたのは岡田茂。さすがだ。

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