1973年の連続テレビドラマ。第11回ギャラクシー賞を受賞した名作。
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あらすじと感想
映画監督の木下恵介が作った木下プロが制作した「人間の歌シリーズ」の12作目。
脚本を担当したのは山田太一。
このドラマが画期的だったのはそれまでのホームドラマにありがちだった
「家庭は明るく温かく」といったステレオタイプをぶち壊した点にあるといっても過言ではない。
生身の家族はそんなにおめでたいもんじゃないよ、ということを時代を越えて私達に教えてくれる。
長期住宅ローンでマイホームを建てたどこにでもある平均的な家庭が舞台。
メンバーは夫が小林桂樹、妻が久我美子。長男が林隆三、次男が小倉一郎、長女が高沢順子。
その他に桃井かおり、火野正平。まあ今観れば豪華なメンバーである。
心は優しいが出来の悪い次男、小倉一郎の目を通してドラマは進んでいく。
父親は定年間近で仕事上の借金を抱えている。
挙句の果てには脳梗塞になり大騒ぎ。
長男は子持ちの彼女と結婚したいと願うが誰にも祝福されそうにない。
次男は友達にそそのかされたとはいえ電車の中で痴漢。
しかもその相手が長女が入っている不良グループのリーダーだった。
こんな感じで一家はバラバラ状態。
時々結びついているように見えてもやっぱりほころびはあるもの。
家庭というものはいろいろな人間が
秘密を持っていてそれを隠したり我慢したりしながら
構成しているものなんだということを見せつけたドラマが
多くの賞を獲得しいまだに人気があるのも頷ける内容。
オイルショックの年に放送されたのも何かの縁か。
右肩上がりの高度成長も繁栄もどこかに消えさり
2,3年後には狂乱物価と言われたインフレが
やってきたりと不安な時代背景がこうしたドラマを受け入れる素地となったのだろう。
スタジオ収録が主流だったホームドラマが
積極的にロケに出て新鮮な映像を見せたことも
作品の斬新な個性を際立たせることに成功している。
脚本を書いた山田太一いわく、このドラマはドラキュラから発想したとのこと。
つまり子供が小さかった頃は家族みんなが団結しているが
子供が成長してそれぞれの生き方を始めると家族一人一人がドラキュラに変貌していく。
家族といえども一人一人は違うし他人なのだ。
後の「岸辺のアルバム」にも繋がるドラマ作りのやり方が完成していくきっかけとなった作品でもある。
今観ても全く古びることなく、むしろ今だからこそ多くの人に観てもらいたいホームドラマの名作。