1984年火曜サスペンス劇場枠で放送。
原作は松本清張の同名短編ミステリ。ドラマ化の多い作品の一つ。
主演は小柳ルミ子。勝野洋、樹木希林、高橋長英、東てる美などが出演。
あらすじ
電気部品製作所に勤めていた夫・要吉(高橋長英)が倒産でクビに。
学歴がない中真面目に働いてやっと課長になった要吉は、
慣れない肉体労働が長続きせず仕事をコロコロ変えるばかり。
貯金が減る中、2人の子どもを育てるために
生命保険の勧誘員として働き始めた妻の須村さと子(小柳ルミ子)。
先輩の繁子(茅島成美)のアドバイスで独身と偽り
バリバリ成績を上げていくさと子に対して、要吉はどんどん荒んでいく。
ある日、さと子は保険契約率の高い山奥の工事現場に赴く。
そこで出会った建設会社社員・岡島(勝野洋)に惹かれていくさと子。
フィリピンに赴任するため妻として付いてきてほしいという岡島に
さと子は「一年半待って・・・」と答えた。
さと子の同級生・静代(東てる美)と関係を持つなど
ますます荒んでいく要吉がさと子に暴力を振るいだし、
子ども達にも手を挙げ始めた要吉をさと子は思い余って殺してしまう。
夫人評論家の高森(樹木希林)が手を差し伸べ、
世間の注目が集まる中、さと子に下されたのは懲役三年、二年の執行猶予という判決。
しかし、その裏には驚くべき真実が隠されていた――という話。
感想
いわゆる「一事不再理」の盲点を突いた名作ドラマ。
何回かドラマ化されており、どれを観たのかイマイチわからないぐらい。
この作品に関してはちょうどシナリオを持っているので
見比べながら勉強したので結構覚えている。
昔は真面目に勉強してたのね、我ながら。
今再び見比べてみると、結構セリフが削られているところが多い。
ま、時間内に入れるためにはしょうがないかなと思うけれど。
ただ、ラストに関してはドラマだと岡島が何で帰って来たのかわからんのよね。
ここはシナリオ通りに行ってほしかったところ。
シナリオではラスト、浜辺に立ち海を見つめている岡島のところにさと子が走ってくる。
<歓びに満ち溢れたさと子が「あなた…!」と岡島の胸に縋り付こうとすると、
岡島がさと子の裁判が載った新聞の切り抜きを差し出す。アッと息をのむさと子。
岡島が無言のさと子に
「僕が働いているミンダナオの山奥では、日本の新聞も雑誌も届かない。
たまたま日本から来た荷物をくるんだ古新聞で君の写真を見つけた・・・
強引に休暇を取って帰って来たが、もう裁判は終わっていた・・・
(切り抜きの写真破りながら云い、風に散らす)」>
この部分がまるまる無くて、最初から海辺で二人立ってるんだな。
で、さと子の「ごめんなさい…ご存じだったのね…」って入ってくから、
何でご存じなんか、何で日本に帰ってきてんのかわからないんですな。
だからといって、内容知っていたらあまり気にならんかもしれんけど(笑)
出だしが何気ないようで物凄くうまい。
デパートで静代と再会するのだが、クラス会の話でそれぞれの立場が分かる。
話をしている時に、高森たき子が集団で入ってくる。
さと子と岡島の愛のドラマでありながら、
実はさと子、静代、たき子の三者三様女性のドラマでもあるわけだ。
このあたりの見せ方は非常に参考になるし、
シナリオと見比べながら映画やテレビドラマを観るといろいろと気づくことがある。
たまにはもの書きらしいことを書いてみたぞ(笑)