必殺シリーズ2「必殺仕置人」を久々に観る

1973年4月から半年にわたり放送、全26回。
「必殺仕掛人」に続く必殺シリーズ第2弾。
中村主水が登場した記念的作品として知られている。
もっとも中心人物として描かれているのは念仏の鉄だけど。

あらすじと感想

主要メンバーは以下の通り。
中村主水・・・藤田まこと
念仏の鉄・・・山崎努
棺桶の錠・・・沖雅也
鉄砲玉のおきん・・・野川由美子
おひろめの半次・・・津坂匡章
天神の小六・・・高松英郎
せん・・・菅井きん
りつ・・・白木万理

第1話「いのちを売ってさらし首」

闇の御前と呼ばれる大物が処刑されたがそれは偽物。
身代わりにされた娘の恨みを晴らすべく仕置チームが結成される。
ゲストは菅貫太郎、大滝秀治、今出川西紀など。

正義感爆発の錠にドライな鉄、世を達観している主水、勝気なおきん、三枚目の半次。
後々に繋がるキャラクター配置が活かされている。

命を奪うのではなく辱めを与えるハングマン状態の仕掛けをするのもこの作品の特徴。
ラストの錠が金を受け取るところもポイント。

第2話「牢屋でのこす血のねがい」

豆を買い占め値を釣り上げる雑穀問屋の大物が次々と殺された。
下手人は買い占めに反対し死に追い込まれた泉屋の娘・おしん。
元締である山城屋の罠にかかりおしんは刑死するが・・・
ゲストは原良子、宮口二朗、松下達夫など。

原良子さんって時代劇とアクションドラマのイメージが強いな。
ラストの金無くなったから目こぼししてもらえない山城屋が哀れ。
ていうかザマーミロって感じ。

第3話「はみだし者に情なし」

紀州藩江戸家老の変態爺の貢物にされた女が多数。
蝋燭問屋から八丁堀からグルな状況でいろいろとピンチに。
ゲストは入川保則、常田富士男、芥川一郎など。

脚本家・安倍徹郎節全開というか、結構印象深い作品。
残虐性でも上位にくるんじゃないかな。蝋燭で目つぶしするし。

ラストで亀に仕置料から小判を恵んでやる錠の優しさが好き。

第4話「人間のクズやお払い」

牢内にいる小六に代わって町を牛耳ろうと同業者を消していく政五郎。
目撃した子どもまで殺す残虐ぶりに怒りを燃やす仕置人。
政五郎のかつての仲間・弥七が返り討ちにあって・・・
ゲストは黒沢年男、林隆三、伊藤栄子など。

名匠・三隈研次監督による作品。濃さは抜群。
後のハングマンで共演するマイトVSブラック。
林隆三さんの使い方はもっとやり方があったような。

鉄に肩を外された政五郎が仲間にぶった切られる仁義なき戦い状態。
残った奴らを主水と錠が殺し、それを依頼人に見せているのもこの頃の特徴。

やっぱり初期の必殺シリーズは濃密さが魅力。
殺しに至るまでのドラマ構築が素晴らしい。
ラストは天神の小六が率いる大群から橋の下に隠れてやり過ごす。
このあたりの面白さもいいんだよねえ。

第5話「仏の首にナワかけろ」

佐渡金山時代の仲間で焼き芋屋を営む安蔵と再会した鉄。
落盤時に自分を助けてくれた安蔵と旧交を温める鉄だが、
人柄の良さそうな安蔵には隠された裏があった――。
ゲストは山田吾一、藤田弓子、遠藤辰雄など。

これも結構印象に残る作品。
山崎努と山田吾一のやり取りがいいよね。
そして一番ワリを食うことになる遠藤辰雄がさすが。
ロシアンルーレット首くくりで仕置が済んだ後の鉄の表情が何とも言えない。
しかし藤田弓子さんは丸っこいおばさん状態しか見たことないから
言われないとわかんないかもね、あれ。
あと正司照枝さんが女郎役で出ている。かしましくは全くない(笑)

第6話「塀に書かれた恨みの文字」

江戸で巻き起こる連続辻斬り事件。
田舎からおしまに会いに来ていた父と妹も被害にあう。
辻斬りをしていたのは守山藩のバカ殿だが、奉行所に身代わりを差し出す・・・
ゲストは中尾彬、佐々木功、鈴木瑞穂など。

バカ殿を牢屋にぶちこみお仕置きに溜飲が下がること間違いなし。
現代社会もこうあってほしいもんだ。

第7話「閉じたまなこに深い渕」

母と兄の仇と清原検校を襲った娘・お糸。
主水に捕縛されたお糸の裁きはなぜか検校が行うことに。
その裏に隠された真実を知った仕置人は――。
ゲストは神田隆、亀石征一郎、柴田美保子など。

柴田さんは脚本家・市川森一さんの奥さんですな。
この回の放送後ぐらいに「必殺仕置人」を見て人を殺した、
という事件があって大騒ぎになる。
別にドラマを観たからではないのだが、よくその後も放送できたものだ。
ま、多少マイルドにはなっていくけど。
体を張って守ってくれるプロデューサーがおらんと、
いいドラマはできませんわな。

第8話「力をかわす露の草」

首を吊ろうとしていた腰元を助けた鉄。
死のうとした理由は将軍ご寵愛の姉を持つ若年寄の妻の犬を見失ったため。
女性版綱吉と化した妻・ぬいの側にはボディガードの大男。
傲岸不遜の悪女と剛腕の大男を仕置できるのか――。
ゲストは安田道代、柳生博、大前均など。

安田道代の悪女が強烈な印象。
この頃「大江戸捜査網」にはもう出てたのかな。
「情で仕置はしない」と語る鉄が
「全くやる気はねえけどな、もしやるとしたら」と主水と互いに話す場面が好き。

第9話「利用する奴される奴」

花魁・お順に入れあげる鉄。
だが、お順はスケコマシの清造に食い物にされていた。
用のなくなった女は冷酷に始末する清造を仕置人たちは――。
ゲストは津川雅彦、日高澄子、磯野洋子など。

津川雅彦悪役シリーズ第1弾。
この頃干されてたんだな、確か。
毎度ジゴロな感じでキメてるのだが、
殺される時はものすごーくマヌケな感じなのが最高(笑)

第10話「ぬの地ぬす人ぬれば色」

将軍の側室お美代の方は外出先で目に留まった友禅を無理やりお買い上げ。
それは娘の婚礼衣装と断った父親と婚約者をぶった斬る。
さらに残された娘・おゆきを大奥に召し抱え、
買い上げた友禅を雑巾にしろと悪女感全開。
さらにおゆきに将軍から声がかかり、逆上したお美代は――。
ゲストは北林早苗、鮎川いづみ、上野山功一など。

後のお加代、鮎川いづみさん登場。キレ―。
この頃の感じの方が好きかな。加代だって当初はキャラ違ってたし。
かしまし娘長女・正司歌江さんがおきんの仲間として登場。

第11話「流刑のかげに仕掛あり」

奉行の信頼を受けて同心より権力を持つ岡っ引き・鬼岩。
当然主水なんかバカにされまくりで、湯屋でケツをはたかれる始末。
この鬼岩が仕置人に目を付けたことから大ピンチに――。
ゲストは今井健二、穂積隆信、三島ゆり子など。

今井健二さんの鬼岩は一味違うベスト悪役かも。
「弱え者にとっちゃ住みづれえ世の中でもよ、
俺にとっちゃ楽しい世の中なんでえ!」ってセリフは最高。
でも殺されるけど(笑)
湯屋で主水をバカにして湯屋で仕置されるってとこがいいわな。

第12話「女ひとりの地獄旅」

大陸から流れ着いた李一族を優遇していた畠山藩。
ところが藩主が老中候補になったため口封じで皆殺しに。
一人生き残った娘・麗花と半次が知り合ったことから――。
ゲストは佐野厚子、前田吟、長谷川弘など。

次の「助け人走る」でレギュラーとなる佐野厚子さんが登場。
晴れて二人が結ばれるには次のシリーズまで時間がかかるのだった。

第13話「悪いやつほどよく見える」

家老の娘・冴をさらって油屋に立てこもった岩木藩下士・多田兵助。
救出を命じられた主水だが下士の話を聞いているうちに――。
ゲストは林ゆたか、高樹蓉子、渥美国泰など。

出だしのインパクトがいいやね。
林ゆたかさんの兵助は感情移入できるなあ。
笑顔の鉄が「庭の百姓が呼んでるぜ」って家老に放つセリフが好き。

第14話「賭けた命のかわら版」

半次のライバル瓦版屋の留蔵。
鳴海屋の悪事をすっぱ抜いた留蔵だが、女房も自分も殺されてしまう。
それを知った鉄たちは――。
ゲストは石山律、川合伸旺、汐路章など。

悪役の地位を高めた一人、川合さん登場。
殺しの現場である吉原の座敷で下げられた料理を貪る鉄(笑)
隣の部屋から襖越しに右手一閃、骨外し。かっこよすぎる。

第15話「夜がキバむく一つ宿」

信州の藩の勘定方と江戸勤番を仕置した鉄と錠。
しかし帰り道、豪雨で札止めとなり女に誘われるまま山中の小屋に。
雨が降りしきる中、小屋にいた人間が一人また一人と殺されていく――。
ゲストは殿山泰司、伊佐山ひろ子、左時枝、梅津栄、牧冬吉、堺左千夫など豪華。

これが仕置人の中では一番好きなエピソードかな。
いわゆるワンシチュエーションもの。
抜群に面白いし、やるせなさと憤りが伝わる鉄の最後のセリフがいい。

第16話「大悪党のニセ涙」

三国屋殺しで捕まった仙八だが無実を叫ぶ。
病身の母に会いたいとの仙八の思いにほだされた小六は
牢に火をつけ解き放ちさせてやるのだが――。
ゲストは森次浩司、西田良、津坂浩史など。

タイトルそのまんまの展開(笑)
モロボシダンがセブンではなく悪党に変身。
囚人が帰ってくるかどうかのサスペンスは時代劇でよくあるが、
帰させないことで済ますドラマというのは意外と珍しいかもね。

第17話「恋情すてて死の願い」

失火の罪を問われ火あぶりになった油問屋・但馬屋。
しかしそれは付け火で、残された姉妹がそれを追及しようとするが――。
ゲストは中田喜子、長谷川澄子、高峰圭二、高野真二など。

棺桶の錠の怒り爆発の巻。
まあたいていいつでも怒り爆発ではあるが。
中田喜子さんデビュー2・3年目ぐらいじゃないかねえ。
デビューも時代劇だったんじゃないかな。

第18話「備えはできたいざ仕置」

若い娘を連れ込んでは鬼の面をつけていたぶる趣味を持つ旗本・加納十兵衛。
発狂した婚約者・おさとをこんな目に合わせた犯人を
大工・佐吉は探すのだが逆に返り討ちにあってしまう――。
ゲストは田口計、中井啓輔、高森玄など。

おきん&半次が「十兵衛~」と迫る怪演が見もの。
あと長屋にハンモックがあるという小道具の使い方も面白い。
みんな寄り集まって生きてる感が本シリーズの魅力でもありますな。

第19話「罪も憎んで人憎む」

大飢饉の中、江戸で打ちこわしが勃発。
その報復とばかりに無宿人狩りが行われるが、
実は裏で糸を引く老中と金座による金堀人足集めだった――。
ゲストは伊丹十三、加藤武、川口恒、志賀勝など。

数ある仕事人の中でも鉄のキャラは最高傑作の一つだが、
そのキャラがモロに出ている作品かなあと。
なんせ打ちこわしには嬉々として参加するし、
仕置料だけでなく小判余計にもらって逃げる。
ボロボロ落としたりするけど(笑)
あれでいいと思うんだよねえ。
なんか後期になってくると妙に分別クサくなってくるんだよな。
珍しく漢気を見せる主水、ゲストの好演もあって見どころの多い作品。

第20話「狙う女を暗が裂く」

長屋に逃げてきた鬼寅がおきんを人質に立てこもった。
鬼寅をここまで追い込んだ連中に仕置人の怒りが爆発する――。
ゲストは夏八木勲、真屋順子、沢村宗之助など。

鬼寅の気持ちが痛いほどわかるねえ。
男は惚れる相手を間違えるとエライ目に合う。
しかも相手は何とも思っていない。
そりゃいてまえ!てなもんだ。
これもワンシチュエーションものでよくできてるよねえ。
沢村さんは第22話で出てくる伊藤雄之助さんのお兄さん。
どちらもうまい。

第21話「生木をさかれ生地獄」

貧乏人の地所を取り上げるあこぎな札差・備中屋。
さらに備中屋は勘定吟味方・平田と組んで佐渡の金横流しを画策。
主水たちは二度と行きたくない佐渡に仕置に向かうことに――。
ゲストは柴田侊彦、西沢利明、浜田寅彦など。

柴田さんは俳優一家でお姉さんは
必殺シリーズで悪女を多く演じた弓恵子さん。
西沢さん、浜田さんと必殺ではおなじみの顔ぶれが揃っている。

第22話「楽あれば苦あり親はなし」

浮き沈みの激しい気性の盗賊・野分の藤造。
奉行所にも顔が効く藤造には誰も手を出せない。
その藤造の子を産んだお波が逃げ出した。
元水茶屋勤めのお波はかつて関係のあった男に
子どもの父親になってもらおうとする。
その相手の中に主水と鉄がいたことから――。
ゲストは伊藤雄之助、朝丘雪路、白羽大介など。

まあこれは伊藤さんの怪演が見もの。怖い。
嘘とわかってて「俺の子どもだからな!」と
仕置に向かう鉄がひたすらカッコいい。
男はこうありたいと思わせてくれる作品。

第23話「無理を通して殺された」

女芸人・お蝶は田舎からでてきた村野の面倒を見てきた。
村野は順調に出世したが、更なる上を求めるあまりに――。
ゲストは村井国夫、野口ふみえ、有馬昌彦など。

これも結構好きなエピソード。
主水と小六の信頼関係、そして主水の怒りが炸裂。
世話になった女捨てて立身出世を図ろうなんざぶち殺されて当然。
一宿一飯の恩義というのは現代でも大事なもんだ。
もっともそれを押し付けたがる打算的な奴もいるからややこしいのだが。
相手に見返りを求めるのは善意じゃなくて偽善ですわな。
やっぱり人間は恬淡として生きてかんと。

第24話「疑う愛に迫る魔手」

女郎屋を立てる計画を立てた悪党のために
鉄たちが暮らす長屋に持ち上がった立ち退き騒動。
古い傷を持つ大家とその娘が殺され、怒りに燃えた鉄と錠は――。
ゲストは美川陽一郎、瞳順子、加藤和夫など。

鉄&錠ってのは一番いい取り合わせかもしれんわね。
かざぐるまの小道具が印象的なエピソード。
瞳順子さんは「賞金稼ぎ」の千枝とか明るいキャラの方が似合うような。

第25話「能なしカラス爪をトグ」

半次が憧れる貧乏旗本の娘・秋絵。
その弟・和馬は難関を突破して学問所に入るのだが――。
ゲストは島かおり、浅茅しのぶ、三木豊など。

島かおりさんも「Gメン75」といい幸薄い役が印象に残る。
半次が慟哭する「ほんとに息子が可愛かったらな、
赤い血が流れるような育て方をすることだ!」ってのは現代でも一緒。
この頃の世代が成長することなく老害化しているパターンも
多いのが現代の悲劇と言えるかもしれませんな。
ま、それも人によりけりだが。
いつの時代もしっかりしているもんはしっかりしてるし、
つまんねえ奴はつまんないもんで。
ただ、その割合は変化しているのかもね。

最終回「お江戸華町未練なし」

大間伐が巻き起こる中、病の父のために使用禁止の
寺社の深井戸に水を汲みに行ったおみ乃が見張りの岡っ引きに手籠めに。
それをきっかけに仕置人チームに解散の危機が――。
ゲストは山本麟一、長谷川弘、外山高士など。

いよいよ最終回。
いささか解散話にしては物足りなさは残るけれど
雨の中、お仕置きになりかけた半次を助けるシーンは迫力満点。
一緒に江戸を去るという主水に鉄がコイン投げで決めようと語る。
細工済みを互いに承知で「世の中裏目ばっかりよ」という鉄がカッコいい。
主水が登場しない回もあるし、この時点では鉄がメインですわな。
歴代メンバー全員でも鉄が一番好きかな。それか半兵衛さん。

まとめ

以上、おおざっぱに全26話。
主題歌は三井由美子「やがて愛の日が」。
最初聴いた時、野川由美子さんが歌ってると勘違いした(笑)
観たのはもちろん再放送なのだが、当時資料なんか簡単にないから。
歌手の時だけ違う名前にしてんのかなとか。似てるし(笑)
観てから何年かして必殺の裏エピソードみたいな本が出て、
そこに三井さんの写真があったから「あ、別人だ」って納得。

現代じゃ考えられない情報の遅さではあるが、
案外その方が記憶には残ったりするもんなのでは。
情報化社会がいくら進展しようが、
人間のものの覚え方というのはそんなに変わらんもんだと思うけど。
便利になったからって自分が賢くなったと勘違いするのは避けたいわね。

最終回の放送は1973年10月13日。
その6日後に自分は生まれたわけで。
だからどうってわけではないが、
一般的には新・仕置人の方が評価が高いようだけど
最初の仕置人の方が好きなんだよねえ、いろいろ粗削りな感じが。

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