1983年9月火曜サスペンス劇場にて放送。
原作は松本清張『新開地の事件』。意外にもドラマ化はこの1作だけ。
主演は藤真利子。吉行和子、井川比佐志、内田朝雄、高岡健二、小松方正などが出演。
あらすじ
法律事務所で働く長野富子(藤真利子)。
富子の家は東京近郊の開かれつつある地域、
いわゆる新開地の場所で養豚場や畑をやりながら
広い土地を有している結構金持ちで、
富子は短大を出たいという希望を叶えてもらうなど大切に育てられてきた。
ところが富子に最初の挫折がいきなりやってくる。
結婚を前提にして付き合っていた画家の徳永(斉藤真)から突然別れを切り出されたのだ。
興信所に素行調査を頼む徳永の親もどうなのよって話だが、
富子ではなく母親・ヒサ(吉行和子)に問題があるのだという。
ヒサに直接確認するわけにもいかず
悩む富子に父親・直治(内田朝雄)の友人で
不動産屋の田山(小松方正)がためらいながらも
ヒサが昔赤線で働いていたことをそれとなく告げる。
ヒサの過去にショックを受ける富子だが、
それ以上にヒサの過去を理由に結婚を断った徳永に腹が立った。
そんな時、直治とヒサから長野家に間借りしている
ケーキ職人の青年・下田忠夫(高岡健二)を婿養子でどうという話を持ちかけられる。
誠実に働いていて両親の信頼も厚い忠夫ならいいのでは、
と思って承諾する富子だがその裏にはドロドロした理由があった。
ヒサが直治の目を盗んでは忠夫と乳繰り合う仲だったのだ。
しかもヒサが富子との結婚を勧めるのは
忠夫を別の女に取られるぐらいならトンデモ理由。
そして月日は流れ、忠夫は長野家の援助で
念願のケーキ屋を開店し富子もそこで働き店は繁盛。
順風満帆に見えたが、ヒサと忠夫の関係に気づいた直治は激怒。
怒り過ぎて脳卒中で倒れ、右半身マヒになってしまう直治。
妊娠していた富子も直治が倒れたショックで流産してしまう。
そして直治は退院するが、ヒサへの怒りは収まらない。
弁護士を呼ぼうとするのだが、ある日ヒサによって
頭を打って事故死したように偽装され殺されてしまう。
その様子を帰宅した富子は見ていたのだが――という展開。
感想
火サスでドラマ化した松本清張ものでは結構上位に入るんじゃないかと。
藤真利子さんもなんか幸せになるドラマ見た覚えがないなあ。
テレビ版『飢餓海峡』とかね。八重の役でしたな、確か。
松本清張ものならザ・サスペンスの『時間の習俗』に出てた。
萩原健一さんの彼女役だったよねえ。
おとっつあんは藤原審爾さん。「秋津温泉」とか映像化作品は多い。
昔『死にたがる子』だったかな、NHKで再放送してたの観たような。
伊丹十三、宮本信子が夫婦で出てたドラマ。あれもう一度観たいねえ。
藤真利子さんは作詞もやってて柏原芳恵の「夏模様」とか。
あれ好きなんだよね。
話はドラマに戻って養豚場で抱き合う吉行和子さんを観るたび
映画『天城越え』を連想する人もいるのでは。似合うんだな、こういう役。
もうなんか土着性の情欲の嫁とくれば吉行さんみたいな。
これがちょいと都会になれば池波志乃さんの独壇場というイメージが(笑)
(池波志乃さんのおとっつあん、馬生さんの落語大好きです)
内田朝雄さん、小松方正さんコンビもさすがというか。
井川比佐志さんの刑事もいいしね。そういえば井川さんも『時間の習俗』に出てた。
まあとにかく富子にやるせなさを感じること請け合いなしなのだが、
一方で得をするのは忠夫というね。店拡張しやがってこの野郎状態。
ま、個人的に「おっ」と思うのは序盤でヒサと隣人の茅島成美さんが会話しているところ。
桜中学じゃねーか(笑)教師辞めて片方はグレたのか、金八先生はどこだみたいな(笑)
そういや茅島さんと中尾彬さんは昔結婚してたんだよねえ。
意外と知らない人多いかも。などなどいろんなことを連想してしまった。
これ、今やっても結構イケると思うんだけどねえ。
富子の方から書くのと忠夫の方から書くのでだいぶ変わるけど。
原作をちゃんと読んだ記憶がないので、今度読んでみよ。