西村京太郎178「夜の脅迫者」を読む

1991年初出の短編集。
しかし、収録されている作品は
昭和40年~50年代初めにかけて雑誌で発表されたもので貴重。

「危険な若者」「ある男の肖像」「脅迫者」
「電話の男」「優しい死神」「めでたい奴」の6編。

要するにトラベルミステリーで一世を風靡する前、
それほど売れていない時代に書かれた作品群。

だが、十津川警部シリーズなどの長編しか
読んだことがない人にとってはとても新鮮に感じるだろう。

そもそも西村京太郎は短編の名手なのだ。

 

「危険な若者」は芸能界を舞台にした
誰からも好かれる影のない若者の裏の面を描いている。

今で言うところのサイコパスの危険性。

「ある男の肖像」はマスコミの帝王と騒がれた
男の死を通して、ある男と女の悲劇が浮き彫りになる。

「脅迫者」は会社で実力者としてふるまう男が
自分の会社の平社員を車で轢いたばかりに転落していく様を描いている。

これは確か映像化されてるんじゃないかねえ。
火サスの「三年目の誤算」って作品もこれなのかな。
中井貴恵、河原崎長一郎らが出てる1986年の作品。
観てないからわからない。

「電話の男」は頭痛で会社を休んだ男に
かかってきた一本の電話から始まる皮肉の利いたサスペンス作品。

「優しい死神」は謎の美女の周辺で起きる
奇妙な殺人事件を追いかける記者とカメラマンの話。

ホラーというか怪奇小説的な部分もあり独特な感じ。

「めでたい奴」は刑務所を出てきたばかりの
二人組に起きる騒動とその顛末がコメディタッチで描かれる。

ほのぼのとして読後感もいい。


このようにそれぞれの作品に特色があり、著者の作風の幅広さが示される。

書かれた時代が時代なので古いところもあるが
底に流れる人間への目の確かさはさすがというしかない。

身につまされる短編集で隠れたおススメ作品。

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