1990年初出の沢崎シリーズの唯一の短編集。
日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞作。
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あらすじ(少年の見た男)
ある女の人を守ってほしい――
沢崎の事務所を訪れた10歳の少年はそう言った。
一万円札5枚を残し雨の中に消えた少年は別人で
あげくに沢崎は銀行強盗に巻き込まれる。
その背後に沢崎が見た少年の依頼の真実とは?
感想
「少年の見た男」「子供を失った男」
「二四〇号室の男」「イニシアル”M”の男」
「歩道橋の男」「選ばれる男」の6編が収録されている。
あ、文庫版には「探偵志願の男」も。
いずれも未成年者がからんでいるのが面白い。
ハメット、チャンドラー、ロスマクドナルドといった
いわゆるハードボイルド御三家の影響、というより
口の悪い評論家にはもろそのままと評されたこの沢崎シリーズだが、
読んでいるとネオ・ハードボイルドと呼ばれた
大好きなロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの方が
影響があるんじゃないかと思わないでもない。
名作「初秋」を引き合いに出すまでもなく
ハードボイルドと少年もしくは少女の組み合わせはよく合う。
かつての教え子の行方を追う教師、
なんて設定がハマるのはハードボイルドならではだ。
(この短編集の中にあるわけではない)
何でハードボイルドと未成年者が合うかといえば
ハードボイルドは作者の人生観がもろに出るからだ。
学校は社会の縮図であり、子どもは大人の生き方を反映している。
大人の価値が低下する世の中で
男を語れるハードボイルド作品を世に送り出したいものだ。