山村美紗短編集「殺意のまつり」を読む

1976年発刊の本格ミステリ短編集。
表題作のほか、「残酷な旅路」「恐怖の賀状」「五〇パーセントの幸福」
「黒枠の写真」「死者の掌」「孤独な証言」の計7編を収録。

あらすじと感想

「残酷な旅路」

年の離れた社長・西園と結婚した若い女性・亜沙子が、
夫の倹約ぶりに辟易しているうちに比較的年の近い西園の弟・達也と浮気旅行に。

ところが、帰ってきてみるとトランクが間違われていて、
それが原因で謎の女性に脅迫されてしまう。

さらに西園が殺され、亜沙子に嫌疑がかけられた事件の真相は――という話。

1983年にザ・サスペンスで、1989年に1時間ドラマ、
2003年に土曜ワイド劇場でテレビドラマ化されている。

樋口可南子⇒水谷良重⇒とよた真帆とヒロイン?が変わっていく。
好短編なので、あとは素材がどういう風に料理されてるかを楽しむ感じ。
ザ・サスペンス版、観てみたいねえ。

「恐怖の賀状」

株に御執心だった未亡人が殺害され、
刑事たちが容疑者のアリバイ崩しに駆け回る話。

これは上手い。お年玉付き年賀はがきがこんな風に使えるとは。
ラストの切れ味もいいし、絵がスッと目に浮かんでくる。
これなんか映像化されててもよさそうなもんなんだけどねえ。

「五〇パーセントの幸福」

中堅タレントと財閥に関係ある新人歌手との間に子どもができた。
しかし、タレントはスター女優との婚約が進んでいて、
結局歌手デビューできなかった彼女とは別れようとしていた。

彼女は子どもを産む決意をし、認知を求める裁判を起こす。
裁判の結果はタレントの子どもとは認められなかったが――という話。

これもよくできてるなあ。対比のさせ方が上手い。
片方上がって片方落ちてというステレオタイプじゃないところがいい。
哀愁もあるしね、これなんかサスペンスドラマとして最適と思うんだけど。
ラストに「シングル・アゲイン」が流れる様子が目に浮かぶ(笑)

「黒枠の写真」

倒叙もの。
同じ番組を別の場所で撮ったことがアリバイに繋がるのだが、
それをどう崩していくかがポイント。

これは地域を理解しているものならではの展開ですな。

「死者の掌」

死体に置かれた三つの通帳の謎。
その掌の持ち主は通帳が作られた2日前に死亡していた。
いったい誰がどうやってそんなことを?――という話。

これは終わり方がやるせない部分がある。
1986年に山村美紗サスペンスとして1時間枠でドラマ化。
スタッフ・出演者がなかなか豪華。タイトルは「死者の手のひら」。
脚本は中島貞夫、演出は大洲斉。
出演は松方弘樹、工藤夕貴、内田稔、島村佳江、内藤剛志、
桜木健一、北村総一朗、藤岡重慶などめちゃくちゃブラボーなメンバー。
観たいわあ、これ。

「孤独な証言」

飛行機事故でただ一人生き残った若い女性が
次第に追い詰められながらも記憶を取り戻し、成長していく話。
心理過程の持っていき方が上手い。ラストのセリフも効果的。

「殺意のまつり」

若手弁護士のもとに
以前、国選弁護を担当した男が訪ねてくる。
同房にいた男が、冤罪を訴えている事件の真犯人だというのだ。

本人に会った弁護士は確証を深め、現地を訪れる。
時効が経過していたため、法律上は冤罪が晴れることはなかったが
その告白はとても重要でマスコミは一斉に報道する。しかし・・・という話。

これは抜群に上手い。
二重三重の展開があって、まさにタイトル通り「殺意のまつり」。

2001年に「女と愛とミステリー」枠でテレビドラマ化。
タイトルは「殺意の果てに 飛騨高山夫人絞殺事件」。
原作では事件の場所は大分。ドラマでは飛騨高山なのね。
月見草もアクセントになるんだけど、ドラマではどうなってるのやら。

加藤剛、竹下景子、小田茜、荻島真一、滝田裕介、中野誠也、
風祭ゆき、そしてやっぱり紅葉はんも出演。

原作の面白さがどれだけ活かされているのかはわからない。
終わり方はどうなってんだろ。観てみたいですな。

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