1983年刊行の作品。
もともとは1963年から翌年にかけて小説現代で連載されたもの。
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あらすじ
亡き夫の遺したレンズ製造会社「中部光学」を経営している加須子。
ところが、親会社であるケーアイ光学の倒産を知り、
債権者会議に出席するため長野から東京へ。
絶望的な気持ちで座っている加須子ら債権者と異なり、
ケーアイ光学社長・森崎ら経営陣は巧みに追及をかいくぐる。
そこに一人の男が現れ、すべての債権を額面の4分の1で買い取るという。
さらに大手企業専務が手を差し伸べてくれるが、
亡き夫の妹・多摩子の行動が更なるトラブルを招いていく――という話。
感想
今まで知らなかった話だけど、これは相当面白い。
冒頭の債権者会議の場面が圧巻で、下請け会社の悲哀と大企業の横暴が浮かび上がる。
その後も親会社の方針変更で、苦労して作り上げたレンズがパーになったり。
そこに空気の読めないお嬢さん・義妹の多摩子がトラブルまき散らすんだからたまったものではない。
この多摩子のキャラがなかなか際立っていて、
ステレオタイプのようでありながらリアリティがあるというか。
こんな人、今でもいそう。
ラストも映像的で映えますな。
諏訪湖の底に眠るレンズかあ・・・タイトルもいいし。
映画にもテレビドラマにもなってないのが不思議。
「溺れ谷」とかはなってるのにね。
業種や舞台が特定され過ぎてて、難しいのかな。
有名どころと比べても遜色ない一冊。