松本清張プレミアム・ミステリー「翳った旋舞」を読む

2019年出版のプレミアムミステリーシリーズ。
もともとは1963年に『女性セブン』で連載されたもの。
映画・テレビドラマは現在のところなし。

あらすじ

R新聞社の資料調査部で働いている三沢順子。
大学卒業して1年なので職場では完全に下っ端。

貯金が楽しみのハイミスもいれば、
酒とギャンブルに溺れ職場にロクにいない次長、
出世のことしか考えていない部長もいる。

ある日、整理部の木内という男が来て
「S・フレッチャー」の写真を求めてきた。

順子は書棚の奥からファイルを取り出しすぐに渡したが、翌日大問題に。

渡した写真は別人のものだったのだ。
部長も次長も木内も左遷されることになり、順子は自分のせいだと悩む。

同級生のクラブホステス・真佐子が唯一の心の拠りどころ。
順子は真佐子のもとを訪れ、悩みを打ち明ける。

やがて偶然、真佐子の店に通う客が
部長たちの左遷を決めた編集局長だと知った。

順子はR新聞社を巡る男たちの野望や策略の渦に巻き込まれていく――という話。


感想

読む人によってかなり評価が分かれそうな作品。
殺人事件や謎解きなどミステリ色が濃いものを求める人には向かず、
主人公のキャラクターを重視したい人には向かないかもしれない。

主人公・順子の成長物語という見方もできることはできるが、
まあそう言い切れるもんでもない。

そのあたりが映像化が一度もない(記憶する限り)ことに繋がるんだろうが、
そういうことを差し引いてもこの作品は非常に面白い。

部署の中では偉い人間が一つ上のステージでは相手にへりくだり、
その相手もまた違う一つ上のステージでは相手に平気でへりくだる。

新聞社の買収を考えている大物は、それらしく振舞うも
予想もしなかった事態に慌てふためき馬脚を現してしまう。

そういう男たちの姿を見て、順子はある決意をする。
このあたりは人間模様の活写に長けていたさすが松本清張という感じ。

当時と比べ、新聞社の権威なんてものは地に堕ち
もはやテレビ局も加え不要のものとなりつつある。

かえって現代の方が合うかもしれない。
これをドラマ化したらいいものができるだろうに。

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