西村寿行「濫觴(らんしょう)の宴」を読む

1983年出版のハード・バイオレンス小説。
映画化されたらさぞ面白いことだろう。

あらすじ

府中競馬場の売上金39億5千万円が何者かに奪われた。
現金輸送車を高速道路で大型ヘリによって吊り上げるという前代未聞の犯罪。

捜査陣は大至急輸送車の行方を探すが、
見つかった現金輸送車は張りぼてで犯人はどこかへ消えた。

警視庁捜査員の黒沼警部は犯人の行方を追う。
犯人は39億5千万を何に使おうとしているのか。

やがて黒沼は父親で元捜査一課長の定吉に疑いの目を向ける――という話。


感想

相変わらず口あんぐりの展開。
なんちゅうか個人を描きながら社会を描くって感じがいい。

ハードロマンと呼ばれる作風はひと頃やたら出たものの、
そのあたりが段違いなんだよねえ。

しかしまあ、現金輸送車奪われて
現金巡ってバイオレンスかと思いきや話はだんだん違う方向に。

まさか狩猟行政の話に行くなんて誰が思うかいな(笑)

黒沼親子の男としての姿、
終盤の方にあるロシアンルーレットとか場面場面がいい。

全体通してみればまとまりあるかといわれりゃ微妙だが、
そんなものどこ吹く風というエネルギーは抜群。

加えて狩猟する側の気持ちも描かれているところがマル。
どうしても一方側から描きがちだし、プロパガンダみたいになってしまうからね。

特に100かゼロかみたいな単純思考が多い世の中だし。
清き水に魚は住まんし、そもそも人間なんてのはグレーゾーンで一杯だ。

叩けばホコリの出ない人間なんかおらんし、
仮にそこそこ歳とってそんな人おったら
正直よっぽどつまらん人生ちゃうかとすら思えてくる。

狩猟行政=生態系を壊しているとは言わんが
議論されてしかるべき話かなあとは思う。

もっとも最近では「自然エネルギー」とか言って
山切り開いて空から見たらなんじゃこりゃ状態の方が
取り返しのつかない環境破壊を生んでるのではなかろうかという気がするけど。

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