1977年出版の長編ミステリ。
同年に田中登監督、永島暎子主演で映画化。
古尾谷雅人のデビュー作でもある。
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あらすじ
舞台は東京近郊にある中学校。
ある日、若い音楽教師・田路節子が校内で強姦された。
犯人と思われるのは校内の不良グループで、
その中心にいる江川が主犯と思われた。
しかし、節子から相談を受けた校長・神野、
教頭・安倍、江川の担任・瀬戸山は事件をもみ消そうとする。
ただ一人、生活指導主任・影山は抵抗するが無力。
さらに非組合員である節子に対して、
こともあろうに教師を守るべき存在であるはずの
教職員組合分会長・小林が生徒を誘惑したのは節子だという噂を流す。
節子が失踪する中、修学旅行中に江川が何者かに誘拐された。
身代金は500万。母親が大騒ぎする中、小林が殺される事件が――という話。
感想
学歴社会、乱塾時代という言葉が出始めた時代。
「教師」そのものにスポットを当てたところに新しさがあった。
その「教師」は教育を行うに相応しい人間なのかどうか。
免許を持っていればすべて適格なのか。
求められる教師像以前に、人間として欠陥はないのか。
今日においてもその指摘はなお重要で、著者の先見性が光るところ。
教職員組合、当時は日教組だけだがその実態を告発しているのも新鮮。
こういうのあんのよね。
労働者の権利をなんて言いながら、
正社員と非正規をあからさまに区別したがる連中とか。
43年も前の作品なのに現代にも通じるってのはいいのか悪いのか。
いじめを始め、毎度繰り返されるさまざまな事件に対して
その都度隠蔽体質と事なかれ主義が暴かれてきた。
しまいには教師同士でイジメだすんだからどうしようもない。
どういう教師に出会うかってのは、結構人生大きく左右するんだけどねえ。
まあ自分なんかでも読書感想文書くの勧められんかったら
もの書きなんて仕事してないだろうし。
時々せんかった方が貧乏しなくて済んだんじゃねえかと思わんでもないが(笑)
映画はあるのは知ってたけど観てない。
なかなか観る機会ないのよねえ、これ。
永島暎子、蟹江敬三、樹木希林、宮井えりな、久米明、穂積隆信など。
結構豪華なメンバーだけどねえ。原作とどんな風に違うのか確認してみたい。
刺激になった一冊。
追記
初期の土曜ワイド劇場でも映像化されてるみたい。
まだ90分枠の時代。
出演は和泉雅子、黒沢年男、谷隼人、加茂さくら、小池朝雄など。
それはそれで興味ありますな。