森祇晶「覇道 心に刃をのせて」を読む

1996年出版の本。
西武監督を退任後、週刊ベースボールに連載していたものを
加筆修正のうえまとめた一冊。

主に西武監督時代の9年間の話。
1986~1994年なのだが、
もし1989年も勝っていたら少なくともリーグ優勝は9連覇。
1985年もリーグ優勝はしていたのだから、
絶対抜けないと言われた川上巨人の9連覇の記録を塗り替えていたかもしれない。
さらに1982・1983年は日本シリーズも優勝しているのだから、
当時の西武は強かったとあらためて思う。

毎年のシーズンについて書かれていることも興味深いが、
目を惹いたのは1989年優勝を逃し、妻と出かけた中国旅行。
天安門事件の年だったのね、そういえば。
そこで出会った人たちとの話がよかった。

野球の話では日本シリーズに関すること。
1987・1988年は第1戦の相手投手を見てシリーズの勝利を確信。
1991年は王手をかけられながら相手投手の使い方を見て、
勝利を確信していたこと。

このあたりは前任者・広岡監督の影響もあるんかね。
ていうかそもそも思考が似てるんかもしれんけど。
日本シリーズの先発投手の決め方も面白い。
常に始まる前、第7戦までの先発投手を決めるのだそうだが、
第1戦は投手陣の核になり、その年の実績はもちろんだが、
スタミナがあって回復力が早い投手を選ぶそうだ。

第2戦は安定感のある投手、
第3戦は球威のある投手、
第4戦は一発勝負型の投手…

なるほどなあと感心。
何でも先を俯瞰して見る目を持たなあかんのよね。

伝説の名勝負と謳われる野村ヤクルトとの2年間のシリーズの話も。
印象に残っているのは1993年の場合、第6戦の9回表とのこと。
ヤクルトが2-4のシーンでワンアウト1・3塁。
バッター代打・八重樫でカウントノーストライクワンボールからエンドラン。
結果はレフトライナーで点は入らないのだが、
立場替われば自分も同じサインを出していたかもと語る。

この時のテレビ解説の連中はサインミスだのなんだの
当事者の意識とはまるっきり違うことを言っている。
ぼんくらなのも甚だしい(笑)

野球の醍醐味はこうした土壇場での心理戦にあると著者は語る。
野球を熟知している監督でなければ決断できない戦法だと
このエンドランのシーンを高く評価している。
やはり勝ち続けた人の話はためになるとあらためて思うし、
野球を知らない解説者の話は全く意味がないと感じる一冊。

P.S
ちなみに第6戦の場面、ヤクルトの古田が後に語っているのを読むと
ヒットエンドランではなくギャンブルスタートだったとのこと。
あの前年の広沢のスライディングから始まったギャンブルスタートである。
この第6戦の場面が伏線にあって、
第7戦の8回表にはギャンブルスタートのサインは出なかったそうである。
そこで古田独自の判断で追加点をもぎ取るわけだが、野球の奥深さがよくわかるエピソードである。

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