西村京太郎473「一億二千万の殺意」を読む

2010年出版の短編集。
「母親」「見舞いの人」「落し穴」「九時三十分の殺人」
「二十三年目の夏」「海辺の悲劇」「優しい悪魔たち」
「十津川警部の孤独な捜査」の計8編を収録。

あらすじと感想

「母親」は北國新聞夕刊1971・8・7掲載。
文庫に収録されるのは初めてのことらしい。
初期作品におなじみの新聞記者・田島が登場。

小さい子供が川に落ちて死んでしまう。
どう見ても事故死だが、殺されたという噂が――という展開。

初期作品らしい優しさと憤りに溢れた作品。
こういう作品好きなんだけど、この時代売れんかったというのもわかる。

「見舞いの人」はオール読物1967年3月号掲載。
交通事故で入院した高校生の美奈子。
同室の自分の倍ぐらいの歳である京子のもとに通う男。
その様子を見るうちに弟だと紹介された男が、
本当は夫なのではとあれこれ推理をするのだが――という話。

なんやかんやで松本清張の影響をうけていたのではと思える作品。
もっともラストのような感じは、清張作品との対比があるかなと思う。

落し穴」は前にも読んだような。これは上手いよねえ。
九時三十分の殺人」「二十三年目の夏」「海辺の悲劇」も以前読んだ。

「優しい悪魔たち」は2014年にフジの佐々木丈太郎7としてドラマ化。
原作は倦怠期真っただ中の団地妻3人が、刺激を求めて始めたいたずら。
それがだんだん悪意を増殖していくのだが、その歪みがわが身に跳ね返る。
ま、いわゆる因果応報というやつですな。

ドラマは観てないから何とも言えないが、
あらすじを読む限り別もんと考えていいでしょ。
ま、設定が残ってるとしたら団地で怪文書出ていたのが、
時代ですねえタワーマンションで巻かれるという。

そんな高層階に住んでたら防犯カメラとか
いろいろあるんちゃうのとか思うのだが(笑)
ま、それはいいとして。

最後の「十津川警部の孤独な捜査」は
小説新潮1985年5月号掲載。トラベルミステリー驀進中の時期。

失言を重ねる国務大臣が何者かに脅迫されているらしい。
十津川警部は三上部長からの依頼で、一人極秘捜査を行う。

大臣の地元である鳥取で一人奮闘する十津川に危機が――という話。

結構異色といえば異色。短編でもこの頃はしっかりしてる。
終わり方は中途半端といえば中途半端だが、悪くはない。
何となく不思議な余韻が残る。このあたりは勉強になるかな。

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