1977年初出の作品。
モデルになったのは1952年大分で起きた菅生事件。
駐在所爆破を警官がでっち上げたフレームアップとして有名。
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あらすじ
朝日新聞社に勤めている新聞記者・池島。
しかし、小倉に転勤した後レッドパージにあう。
地域新聞を作るなどしながら糊口をしのぐ池島だが
黒人脱走兵事件などを扱いGHQににらまれ囚われの身に。
サンフランシスコ講和条約が成立し釈放された池島は
ひょんなことから豊後日日新聞の社会部記者になることに。
中央マスコミへの復帰を狙う池島の身に降ってわいたのが
1952年6月2日、大分県菅生村で起きた菅生事件だった。
駐在所が爆破されたこの事件は目撃者によると逮捕者は3名。
しかし、警察は共産党員2名を逮捕し、もう1名は逃げられたと発表。
池島は消えた容疑者・秋草の行方を追ううち、
事件そのものに疑惑を抱いていくが――という話。
感想
ノンフィクション・ノベルというだけあって
事件の経過や裁判の推移がわかりやすい。
当初は冷淡な態度をとっていた共産党中央が
裁判が進むにつれ、積極的に乗り出すさまは
今も昔も変わらん体質を物語っている。
この時代、いろんなフレームアップがあったけど
白鳥事件のように冤罪と言われながら
実はやっていたというような事件もある。
このあたりはまだまだ解明されるべき点も多いような。
ま、菅生事件の場合はそんな話ではなく
とんでもないでっち上げだったわけだけど。
そもそもでっち上げを証明する決め手となったのは
駐在所が外からではなく内から爆破されたという
事件の根幹をひっくり返す発見があったからだ。
これを見抜いたのは正木ひろし弁護士。
多くの冤罪事件を弁護し、一時代を築いた人。
この人のドラマってやってみたいけどねえ。
昔「知ってるつもり」で取り上げられてて
こういう弁護士になりたいと思ったものだ。
この小説の魅力って単に事件の詳細な推移だけではなく
池島って主人公が結構俗物的な人間ってとこにある。
やたら女変えるし、でも冴えてるところは冴えてる。
こういう主人公の描き方もありだなと勉強になった。
ジャーナリズムとはなんぞやってとこも押さえてあるし。
今の時代だからこそ読んどいたほうがいい作品。