1988年初出の作品。直木賞候補作。
有力視されていたが受賞はならなかった。
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あらすじ
明治10年――。
現在の和歌山県太地町。
この紀州の海辺の町は捕鯨が生活を支えていた。
ところが、クジラが突如やってこなくなる。
困窮する村を救うため、捕鯨責任者の勝山良之助は
若い未亡人・お妻を伴い大阪に金策に出る。
だが、ことごとく不調に終わるだけでなく
他国のやり方などを知り捕鯨の未来に失望するのだが――という話。
感想
「鬼畜」「丑三つの村」など
独特の犯罪小説で一世を風靡した著者の初めての海洋冒険小説。
ぐいぐい来る感じは相変わらず素晴らしく
弟の西村寿行さんともども読ませてくれる。
タイトルにもある「刃差し」とは
古代捕鯨漁において鯨に銛をぶち込んだり
鯨に乗っかって鼻切ったりという作業を命がけで行ってた人を指す。
このあたりのタイトルセンスが素晴らしい。
太地はうちの田舎の近くでもあるし、
釣りに行ったこともあるし同級生も結構おったしなじみ深い。
こういうの題材にすると男のロマン的な話になりがちだが、
古式捕鯨から近代化する時代の男と女の数奇な運命を描く――
ここらあたりもさすがとしか言いようがない。
着眼点って大事よねえ。ラストも情感こもって読ませてくれる。