1972年出版の作品。
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あらすじ
アイヌを先祖に持つ気鋭の民俗学者・若杉。
ある日、勤務先の大学の実力者である大河内に
与論島に行ったきり家に帰ろうとしない娘を連れ戻してほしいと頼まれる。
その娘・亜矢子は若杉の教え子だった。
無下に断りにくい若杉は与論島へ。
ところが、着いた早々何者かに襲われてしまう。
さらに同じ日、大河内が東京で殺害され
現場には何と若杉が奪われた時計が置かれていた――という展開。
感想
初期に色濃く出ていた弱者(こういう言い方自体好きじゃないが)への
優しい視点と社会への静かな憤りが堪能できる作品。
正直ミステリとしてはどうということはない。
何で時計が置かれていたかにいたってはなんじゃそりゃ、である。
しかし、それを補って余りある内容がちらほら。
この作品が書かれた頃、まだ沖縄は返還されていなかった。
沖縄にわたるために必要な書類のリアリティなどが隔世の感がある。
また、アイヌの血を受け継ぐ若杉だからこそ
共感できる沖縄の苦悩なども読みごたえがある。
この時は若杉助教授なんだね。
後の「殺人者はオーロラを見た」では教授になってたけど。
合わせて読んでもらいたい作品。