西村寿行の処女長編「瀬戸内殺人海流」を読む

1973年出版の実質デビュー作。
1980年に土曜ワイド劇場でテレビドラマ化。
西郷輝彦、池上季実子、大坂志郎などが出演。観たいなあ。

あらすじ

汚職の疑いをもたれていた男が謎の変死を遂げる。
さらに捜査線上に浮かんだ人妻が失踪。
そして二週間後、東京から遠く離れた小豆島沖で溺死体になって発見。

最愛の妻を奪われた狩野の怒りは収まらない。
会社を辞め、妻の死の真相を追求することを決意。
しかし、事件の背後にうごめく黒い影が彼を襲う――という話。


感想

著者の長編デビュー作である本書は
初期の特徴である社会派的要素が散りばめられている。

また、独特の強烈な風土感もすでにこの頃からある。
そしてクライマックスと並行的に描かれる熊鷹と山犬の決闘の部分など
後の動物小説の特色もある(もっともこの作品以前に動物関係の著書あるけど)。

それから男性を描くのがやはりうまい。
事件を追う元社会部記者、刑事、追われる犯人――。
底に暗い情念を隠し突き進む人達。こういうの上手にならんとね。

このあと「安楽死」「屍海峡」と社会派ミステリを経たのち、
「君よ憤怒の河を渉れ」で冒険小説にドーンとシフトしていく著者。

デビュー作らしいまとまり間の無さもそれはそれで味がある。
なんやかんやいうても著者の歴史の中で外せない一冊。

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